3Dプリンターの低価格化などによって、メーカーでない人がモノを自ら作る、いわゆるMakersへの注目度が急上昇している。筆者のような○十年選手の記者には、電子工作や電子回路ブロックの再来のように感じるが、これらは理科系や工作好きなど特定の集団に向けていた。それに比べると、Makersは集団の規模がデカい。電気/電子の基礎をあまり知らない人でも十分にモノ(例えば、電子機器)を作れるような地盤が整ってきたおかげだろう。
このMakersへの波が日経テクノロジーオンラインの電子デバイス系サイトにもやってきた。「半導体デバイス」、「半導体製造」、「EDA・ソフトウエア」、「アナログ」、「電子部品」というテーマサイトに投稿した全記事のうちで、2014年6月23日~7月10日にアクセス数が多かった上位20の記事をまとめたところ(右表)、Makersに関連した記事が1位と2位になった。
どちらも、安東一真の「楽しい電子工作を始めよう」という連載コラムの記事である。1位になった記事のタイトルは、「第1回 大手半導体メーカーが“あなた”に注目」である。この記事では、米国に実効本社を構えるMarvell Technology Group社が開発した「Kinoma Create」という、Webコンテンツの開発者などをターゲットにしている機器を採り上げている。この機器は、チップや基板がむき出しになったRaspberry Piなどの開発ボードと違い、ちゃんとした筐体があり、タッチパネルやWi-Fi通信の機能を最初から備える。価格は149米ドルと手頃で、2014年9月に出荷を開始する予定である。
ベンチャー企業でなく中堅半導体メーカーが開発したこと、クラウドファンディングを利用して開発資金を調達したことなどに興味をもった著者の安東一真(日経Linux)は、Kinoma Createの開発リーダーを務めたMarvell社のPeter Hoddie氏にインタビューしている。Hoddie氏によれば、伝統的なメーカーではなくMakersが作ったモノがヒットしており、Makersのコミュニティーと接点を持つことがKinoma Createの開発の目的だという。半導体メーカーがMakersに近づこうとしているわけだ。
2位になった記事のタイトルは、「番外編 電子工作は主婦の心をとらえるか」である。この記事は日経エレクトロニクスの今井 拓司がマンガ「ハルロック」の作者・西餅さんにインタビューした内容をまとめたものだ。ハルロックは、「天然」な女子大生が電子工作にのめり込んでいくマンガである。インタビューの中で、西さんは、「やっぱり主婦は、昔ながらの電子関係の雑誌を読んでる人たちとは違う発想を持っている」などの指摘している。
Samsung社の 一般消費者向けSSDに高い関心
1位と2位の記事が新しい波とすれば、3位は伝統的なものだった。具体的には、「Samsung、3次元NANDを搭載したSSDを一般消費者向けに発売」というタイトルの記事である。この記事は、韓国Samsung Electronics社が2014年7月1日に開催した、報道機関やブロガー向けイベント「2014 Samsung SSD Global Summit」(2014年7月1~2日、韓国ソウル市)での取材を基に書かれている。同イベントでSamsungは、3次元NANDフラッシュメモリー「Vertical NAND(V-NAND)」を搭載したSSDを一般消費者向けに発売すると発表した。それを紹介しているのが、この3位の記事である。
このSSDは、ハイエンドパソコン向けで、SATA3.0インターフェース(データ転送速度6Gビット/秒)の2.5型品である。平面(プレーナー)構造のNANDフラッシュメモリー(プレーナーNAND)を搭載する従来のSSDに比べて、動作速度や書き換え回数、消費電力を改善した。2014年7月21日に販売を開始し、日本では同年7月下旬~8月初旬に発売する。同社はV-NANDを搭載したSSDのOEM供給を2013年12月に開始しているが、一般消費者向けの発売は今回が初めてである。