半導体メーカーに、成長が期待できる市場を問うと、必ず以下の4つが挙がる。自動車、産業機器、エネルギー関連機器、そして医療・ヘルスケア機器である。今回のSCR大喜利は、「日本の半導体メーカーが攻略すべき医療・ヘルスケア」をテーマに、日本の半導体メーカーの代表3社にフォーカスして、医療・ヘルスケア機器向け半導体市場をどのように攻略すべきか、切り口を探りたい。

 各回答者には、以下の3つの質問を投げかけた。今回の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー
三ツ谷翔太(みつや しょうた) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】東芝は、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】グローバルメジャーにはない統合ソリューションの追求

【質問2】ロームは、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】数の出るアプリにおける顧客ニーズの徹底追求

【質問3】ソニーは、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】イメージセンサのアナログ・プラットフォーム展開の追求

【質問1の回答】グローバルメジャーにはない統合ソリューションの追求

図1●自社らしさを可視化するためのADLのフレームワーク
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 始めに、前置きとして、本稿における筆者の基本的考え方について述べたい。世界的に進行する高齢化と、新興国における生活水準の向上を受けて、エレクトロニクス技術の新たな適用先として期待を集める医療・ヘルスケア市場は、確かに魅力的な市場である。しかしながら、地域ごとに異なる規制への対応や顧客との関係性の構築など、非常に参入障壁の高い市場である。その開拓には10年単位で先行投資を続けるくらいの気概と覚悟が問われる。また、その市場の魅力ゆえに、グローバルな規模で多くの企業が凌ぎを削るレッドオーシャンの様相も呈している。市場トレンドのみを起点とした事業開発アプローチでは、競合との同質化競争に陥ることが懸念される。

 つまり、医療・ヘルスケア市場の攻略に向けては、市場ニーズ起点でのアプローチではなく、自社らしさを起点としたアプローチが必要だ。それも、表出している個別製品・個別要素技術だけではなく、その背景にある自社らしい価値提供のあり方、自社らしい勝ちパターンなどといった“自社らしさ”まで立ち返った事業開発を進めるべきである。弊社ではこれらをIPF(イノベーション・プラットフォーム)と称している(図1)。そこで本稿では、個別具体論ではなく、各社らしさの俯瞰に基づいて、医療・ヘルスケア領域の展開方向性について考えてみたい。