「日本の半導体メーカーが攻略すべき医療・ヘルスケア」をテーマに、日本の半導体メーカーの市場攻略法の切り口を探るSCR大喜利、3回目の今回の回答者は、某半導体メーカーに所属する清水洋治氏である。今回は、東芝、ローム、ソニーの3社に加え、ルネサス エレクトロニクス社が採るべき戦略に関しても、回答いただいた。


清水洋治(しみず ひろはる)

某半導体メーカー
 某半導体メーカーで、(1)半導体の開発設計、(2)マーケット調査と市場理解、(3)機器の分解や半導体チップ調査、(4)人材育成、という四つの業務に従事中。この間、10年間の米国駐在や他社との協業を経験してきた。日経BP半導体リサーチにて、半導体産業に関わるさまざまなトピックスを取り上げつつ、日本の半導体産業が向かうべき方向性を提起する連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」を連載中。

【質問1】東芝は、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】今後普及するウエアラブル機器で集められるビッグデータを効率的に扱えるフラッシュメモリーなど、ストレージでの攻略をより強化すべきと考える。

【質問2】ロームは、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】各種センサーの強みを活かすべきと考える

【質問3】ソニーは、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】CMOSセンサーの強みを活かす

【質問4】ルネサスは、どのような医療・ヘルスケア機器に向けた、どのような半導体の、どのような強みを活かして市場を攻略すべきか?
【回答】堅牢な車載実績とセキュリティ強化で市場攻略

【質問1の回答】東芝:今後普及するウエアラブル機器で集められるビッグデータを効率的に扱えるフラッシュメモリーなど、ストレージでの攻略をより強化すべきと考える。

 予防医療の分野になるが、ウエアラブル機器は、今まで集積できなかった人類の持つビッグデータを手に入れることができる可能性が高くなると思う。例えば、常時変動する血圧や脈拍など。こうしたデータが、個々の生活習慣を変える場合もあるが、多くの人のデータが集まるビッグデータに大きな価値が宿ると予想する。その場合には、データ解析とともに、強大で堅牢なストレージが重要になる。フラッシュメモリーは重要なデバイスとなるであろう。医療機器としては、数量は決して大きくない。ただし、予防機器としてのウエアラブル機器は、民生機器として大きな市場を形成すると予想されている。ますますストレージの意義は大きくなるはずだ。

【質問4の回答】ルネサス:堅牢な車載実績とセキュリティ強化で市場攻略

 防水性、耐久性、高温での正常動作など車載半導体には極めて高い仕様が要求される。また、長期寿命や初期不良率の低さなども車載半導体の条件。これらをクリアしたルネサスの車載用デバイスは、人命に関わる医療機器や正確さが常に要求される予防医療にも十分な性能を備えている。予防医療では、わずかな誤差も問題となる。例えば血圧。もしも10%の誤差があれば、正常から高血圧に判断が変わってしまう場合もある。また長時間使用で不具合が生じても問題となる。堅牢な性能は医療(予防)でも十分な競争力になると考えている。ハッキングやデータ改ざんの絶対に許されない世界が、医療や車載分野である。車載で培ったセキュリティ技術は、被験者・利用者の生データを守るためにも十分な競争力があるものと考えている。