太陽光発電協会(JPEA)、全米太陽光発電協会(SEIA)、GTM Research社の公表値を基に著者が作成
太陽光発電協会(JPEA)、全米太陽光発電協会(SEIA)、GTM Research社の公表値を基に著者が作成
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米エネルギー省(DOE)の情報を参考に著者が作成
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米国の29州でPACEファイナンスを利用できる(図:North Carolina State University)
米国の29州でPACEファイナンスを利用できる(図:North Carolina State University)
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 日本では大規模なメガソーラーの建設に注目が集まっているが、実は米国では今、住宅用市場が急成長している。米国における2013年の太陽光発電システム市場全体の成長率が41%だったのに対して、住宅用市場はそれを上回る60%だった。

 全米太陽光発電協会(SEIA)とGTM Research社の太陽光発電市場レポートによると、2014年第1四半期には米国の住宅用市場が非住宅用市場(企業や政府機関などの建物、工場、倉庫など)を抜くまでに成長した。具体的には、住宅用が232MW、非住宅用が225MW、発電事業用が873MWだった。

 米国の2014年第1四半期の住宅用市場は、日本のそれの1/3程度の規模とまだ小さいが、過去2年の四半期平均成長率(CQGR:compounded quarterly growth rate)は18%で、日本の8%を大きく上回った。

多様なファイナンスが成長を牽引

 米国で住宅用市場の拡大に貢献しているのは、多種多様な「ファイナンスオプション」である。現金購入や銀行融資だけでなく、ホームエクイティローン(HEL、HELOC)やメーカーローン、ソーラーリース、ソーラー電力購入契約(PPA)、そして地方自治体が提供するPACE(property assessed clean energy)ファイナンスなどがある。

 全額一括現金払いで太陽光発電システムを購入できれば、それに越したことはない。しかし、一般消費者の「初期費用が高すぎて手が出ない」という悩みを解決して、太陽光発電をさらに市場に浸透させるために、色々なオプションが米国では提供されている。

 米国では5~6年前から「第三者所有(TPO:third party ownership)」モデルが主流になってきている。TPOモデルは、電力消費者の屋根や敷地に、事業者が太陽光発電システムを設置するビジネスである。設置した太陽光発電システムは事業者の所有となり、発電した電力を顧客に販売する。事業者と顧客は、電力購入契約(PPA)やシステムリースなどの契約を結ぶことになる。

 消費者にとって、ソーラーリースやPPAの大きな利点は、頭金無しもしくは少額の頭金で太陽光発電システムを入手できることだ。さらに、リースやPPAの契約期間中は、事業者がシステムをリモートで監視したり点検したり、修理したり、インバーターを交換したりする。システムの運用とメンテナンスをすべて事業者が担うため、消費者は手をわずらわすことがない。

 TOPモデルで市場を席巻したのは、米SolarCity社や米SunRun社である。GTM社の調査によると、2014年にTPOモデルは米国住宅用太陽光発電市場の68%まで広がると予測している。しかし、これがピークであり、この後はシステムコストの減少に合わせて、ローンや他のファイナンスを使用した直接所有(direct ownership)が伸びるようだ。

 米国では住宅の時価から住宅ローンの額を引いた純資産(エクイティ)、住宅の値上がり含み益を担保にしたホームエクイティローン(HEL)が一般化している。HELには一括して融資実行が行われるローンと、融資枠内なら何度でも引き出せるクレジットライン型のローン(HELOC)がある。

 ちなみに無担保ローンなど、パーソナルローンの形で借入れをして、太陽光発電システムの購入に使うと、消費者支払利子となって税金からの控除が認められない。TPOと比べたローンの利点は、消費者がシステム所有者のため、連邦政府の税制上の措置であるITC (investment tax credit)を使用できることである。これによってシステム所有者は、システム設置購入費の30%を、支払うべき税額から控除することができる。TPOの場合、リース会社は連邦政府のITC制度や減価償却優遇といった税制優遇策を活用する。

 太陽電池メーカーでプロジェクトデベロッパーでもある米SunPower社も、メーカーとしてソーラーローンを消費者に提供している。最近では米Admirals Bank社と提携し、2億米ドルに及ぶソーラーローンプログラムを始めた。このローンはSunPower社の太陽光発電システムを購入する50州に及ぶ消費者が使用できる。