スマートフォン最大手、タブレットPCで2位の韓国Samsung Electronics社は、2014年の旗艦機種「Galaxy S5」を発売した。しかし、同機種の部品ベースの年間想定数量(業界コンセンサス)は従来の7000万~7500万台から6000万台へ低下したあと、さらに6000万台を大きく割り込む水準まで低下している。

 13年のGalaxy S4が最終製品ベースで5000万台程度に終わり、今年のGalaxy S5では比較的慎重な対応をしてきたが、それでも最終需要が生産に比べて盛り上がらず、生産調整の様相を呈してきた。旗艦機種に関しては、Samsung Electronics社からシェアを奪っている特定のブランドが見えない。消費者は、14年9月に投入されると見られる米Apple社の新製品を待っているのか。それとも、Galaxy S5の競争力そのものに問題があるのか、現時点では定かではない。

 Galaxy S5の推定生産数量(部品ベース)は、1Qが600万台程度と13年のS4を上回った。しかし2400万~2500万台程度と見られていた2Qは2000万~2200万台にトーンダウン、3Qも1500万台程度で、四半期単位では2Qが生産のピークとなる可能性もある。

 Samsung Electronics社は、今年もGalaxy S4、S4Mini、S3、S3Mini、S2等、過去の旗艦機種及びその派生機種の生産を続けている。旗艦新機種・既存機種、ハイエンド機種からローエンド機種まで、満遍なく展開することで、幅広い層の需要取り込みを図りつつ、(開発コストを回収済みの)旧機種を継続展開し、収益を確保する戦略と見られる。しかし、全体的に需要は想定より軟調に推移しており、調整気味である。既存機種生産の底入れのタイミングがいつになるのか、9月頃に発売が想定される大型スマートフォンの新機種「Galaxy Note 4」の作り込みのタイミングと数量に注目したい。

 ローエンド機種に関しては、4.0”~4.5”クラスのパネルサイズで、TN液晶を採用した機種を新興国で大量投入している。だが、こちらも想定ほどは盛り上がらず、部品需要は5月中旬以降、軟調に推移している。中国市場では、価格の割には高スペックの製品を投入している中国ブランドに売り負けている。

 一方のタブレットPCに関しては、13年の約4000万台から14年は最低6000万台、可能ならば7000万台以上と相当アグレッシブな見通しを立てており、バリューチェーンへの恩恵が期待されてきた。スマートフォンと同様に、ハイエンドや大型サイズ製品(Galaxy Note Pro 8.4”/10.1”/12.2”)から普及価格帯製品(Galaxy Tab 3 Lite 7.0”)まで、全領域の製品を手掛けることで急成長を継続し、Appleへの猛追を図っている。

 しかしながら、4月に入ってから、中国などで流通在庫が目立つようになり、足元は部品需要、製品生産に急ブレーキがかかっており、6月に入ってもまだ底打ちの兆しが見られない。同社の生産調整、部品発注調整がどの程度続くのか(5月末時点では1カ月強と見ていたが、8月くらいまで長引くおそれが出てきた)、要注意である。現時点では、年間5000万~5500万台のペースに落ちてきているとの印象である。特に、液晶パネルと関連部材、タッチパネルと関連部材に与える影響が大きく、注視が必要である。