レヴォーグの外観
レヴォーグの外観
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 富士重工業が2014年6月に発売した新型車「レヴォーグ」に試乗しました。注目したのが、同車から採用する運転支援システムの最新版「EyeSight(ver.3)」。自動ブレーキなど多くの機能を含むシステムですが、特に気になっていたのが、車線中央維持機能と前方車両追従機能(ACC)の組み合わせです。二つを同時に動かすと、高速道路を走るときにアクセルとブレーキ、ステアリングの操作をほとんどクルマに任せられるのではないかと思っていたからです。つまり、レヴォーグは“ほぼ自動運転車”ではないかと。

 結論から言うと、私の見立ては的外れ。富士重工業は、あくまで「運転の負荷を減らすもの」との考えに徹して二つの機能を開発していました。

 今回走ったのは東名高速道路の御殿場ICと沼津ICの往復で、約40km。東名に入ってまずはACC、次いで車線中央維持機能を設定します。そしてステアリングに手を置いてのんびり走ろうと思っていると・・・なんと同機能が解除されてしまいました。

 実は車線中央維持機能には、運転者が「クルマに頼っている」と、クルマ側が判断できそうな場合、同機能を解除する仕組みがあるからです。同乗していた富士重工業の技術者によると、ステアリングにかかる力などから推定しているとのこと。私の運転は、ステアリングを握ってはいるものの力が弱かったのか、「クルマに頼っている」と判断されたわけです。

 技術者にそのことを教えてもらうと、よこしまな気持ちが少し沸いてきます。ステアリングにかかる力がどれくらいで、「頼っている」と言えるのかと。結果は、感覚的な表現で恐縮なのですが、「クルマをだまそうとして、ちょこちょこと力を加えて操作するくらいでは、“クルマに頼っている”とみなされる」といった感じでした。

 とはいえ、この機能に少し慣れると、解除されずに運転を続けることは難しくありません。その場合、修正舵を自動で加えてくれるので、運転するのがとても楽になります。そしてスムーズだなと感じたのが、同機能が動作しているときにステアリングに少し強く力を加えると、運転者の操作を違和感なく優先する点。前述の技術者は、こうした「クルマ」から「人」への操作の切り替えを滑らかにすることに力を注いだと言います。

 最近、世界で自動運転車の開発が進んでいます。クルマが“運転の主体者”に近づくため、「運転時の主権のあり方」がしばしば取り沙汰されます。ただ、当面は「運転者主権」の時代で、多少の制御をクルマに任せても「運転者の意思」を最優先にする仕組みがいります。レヴォーグに乗っていると、今後の自動車開発では主導権を「クルマ」から「人」(システムによっては「人」から「クルマ」もありうります)にいかにスムーズに切り替えるのかが重要で、そこに技術者の力量が問われるようになると感じました。