トヨタ自動車が異例の技術発表――。5月24日~6月25日に日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「クルマ」で最も読まれた記事は、トヨタが発表したSiCパワー半導体の開発成果について、大下記者が解説したコラムでした(「トヨタ、異例の技術発表のワケ」)。
トヨタは、デンソーや豊田中央研究所と共同でSiCパワー半導体を開発。それを指揮するトヨタの担当部長は「業界に先駆けて(SiCパワー半導体を量産車に)搭載したい」と、説明会で語っています。2020年までにハイブリッド車などのパワー・コントロール・ユニット(PCU)に、SiCパワー半導体を搭載する計画です。
記事によれば、SiCパワー半導体を採用することで、ハイブリッド車の燃費を約10%向上できるとトヨタはみているそう。PCUに体積を劇的に小型化できるという計画を示しています。市場規模が大きく、応用のハードルが高いクルマ分野で、トヨタがSiCパワー半導体に注力することは、同半導体の開発を間違いなく加速すると大下記者は分析しています。
タクシー会社が機器開発
アクセスランキングの2位に入った記事は、別の側面からクルマに関連する業界に変革が訪れようとしていることを示唆していました。題して「そのタクシー会社は、なぜ“機器メーカー”の道を選んだのか」。
TMR台北科技の大槻智洋さんが、東京を拠点とするタクシー国内最大手の日本交通社長に聞いたインタビュー記事です。日本交通は、電子機器の企画や製造を手掛けるジェネシスホールディングスに出資。第1弾の商品としてドライブレコーダーを開発し、機器メーカーへの道を歩み始めました。
なぜ、タクシー会社が機器の開発なのか。背景には、何十年も前から変わらないタクシーサービスへの危機感があります。自動運転のような新技術の登場で、これから始まる変革にタクシー業界は耐えられるのか。単なる「場所の移動」だけではない、付加価値をどう生み出していくのかを真剣に考えなければならない時期がやってきたというわけです。
新しいサービスを生み出すためには、自ら機器を開発した方が手っ取り早い。デジタル機器を巡る最近の潮流を象徴するインタビューでした。EMSの興隆やメーカーズブームは、製造業以外の大手企業のマインドを変える力があるということでしょう。