東京都議会の“セクハラやじ問題”で一躍脚光を浴びた「声紋分析」。非常に高い精度で発言者の特定が可能だという。犯罪捜査や鑑定などで長年にわたって使われてきた技術であり、決して目新しい技術ではない。意外な「ヒット商品」にも活用されていた。

 近年は、ビッグデータを活用する機運の高まりに伴い、指紋や遺伝子情報などと同様に「パーソナルデータ」として取り扱いの議論が活発になっている声紋。さまざまな角度から探ってみた。

発声器官の違いが声紋に現れる

 そもそも声紋とは何か。音声・音響の鑑定、研究開発、コンサルティングなどを手掛ける日本音響研究所のWebサイトに詳しい記述がある。日本音響研究所は、音声・音響研究の第一人者である鈴木松美氏が設立した民間の研究所である。その内容をかいつまんで紹介しよう。

 人間の声は、さまざまな周波数の音の集合である。それぞれの周波数の音が、どの時間にどれぐらい含まれていたのかについて視覚化すると、指紋のような紋様になる。この紋様は人によって異なる。そこで、鈴木氏は声の紋様ということで「声紋」と名付けたという。

 人によって声紋が異なるのは、発声器官(口腔、鼻腔、声帯)、口唇、舌などの形に違いがあるからだ。例えば、音の三要素の一つである「音色」は、口腔や鼻腔の容積および構造に依存していることが分かっている(三要素の残りの二つは、「大きさ」と「高さ」)。このような特徴から、声紋によって個人を特定することが可能になる。

 声紋を用いた個人の特定は、本人のものと証明されたオリジナルデータとの照合が前提となる。だが、たとえ手元にオリジナルデータがなくても、声紋から人物像を類推することも可能だという。具体的には、声紋の特徴から、性別や年齢、身長、顔の形などが大まかに分かってしまうわけだ。