小惑星探査機「はやぶさ2」の構想は、小惑星探査機「はやぶさ」(初代はやぶさ)の同型機を短期間で開発して打ち上げるという考えから始まった。背後にあったのは、太陽系探査を継続的に実施することで、連続して人材を育成するという考えだった(「第1回:はやぶさ2ははやぶさの“後継機”ではない」参照)。太陽系探査は計画立案から実行に至るまで、長い時間がかかる。一つの計画が終わるまで次の計画の立ち上げを差し止めていたら、得られたノウハウは継承されず、計画に携わる人材も育たない。

 しかし、太陽系探査という事業が持つこの特徴は、なかなか周囲に理解されなかった。はやぶさ2計画は2006年から本格的に実現に向けて動き出したが、当初2010年打ち上げ予定のところが、予算がつかなかったために2012年、2014年と遅延し続けた。

 その間に、はやぶさ2は、初代はやぶさそのままの同型機から、徐々に変化していった。変化の理由は、主に三つだ。第一に初代はやぶさを運用していくうちに得られた教訓を生かした改良。第二が、インパクター*1に代表される、結果的に技術開発のための時間ができたことで追加された新装備だ。この他、初代の設計製造から時間が経ったために製造中止となった部品の代替に伴っての設計変更も行われた。代替に伴い性能向上も図った部分もある。

 以下、初代はやぶさと、はやぶさ2とを比較しつつ、その設計を説明していく。

*1 インパクター 対象とする天体(小惑星)の内部の石や砂を採取できるように、金属片を発射して同天体(小惑星)に衝突させて人工クレーターを作る装置。