前回、業務を「見える化」したのはよいものの、結局改善点を抽出できなかったという失敗事例(A社)と、対照的に目的を明確に意識して見える化に取り組んだB社の事例を紹介しました。今回はB社における「改善効果の見える化」など、改革後の姿の見える化と、重要なポイントについて解説していきます。前回記事と合わせてお読みいただければ幸いです。

 改善効果の見える化においても、コンセプトは時系列に沿った整理です。以下の図1に、技術標準を作成することで、試作の手戻りが減少する改善案の効果を見える化した例を示します。

図1●B社事例:期待効果の見える化例
図1●B社事例:期待効果の見える化例
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 図1における最初の6カ月は投資の期間です。技術標準案を作成したり、その検証や修正を行ったりする工数が掛かっています。その後が効果獲得の期間となります。技術標準を活用することで試作の手戻りが減少する分の工数が低減しています。なお、この効果を最も厳密な数値で得るには、工数を費用に換算した上、試作費などを加えて費用で算出します。

 図1の見える化の内容は決して目新しいものではありませんし、難しくもありません。しかし前回の図4~6でご紹介した見える化よりも、行われることが少ないものです。典型的な例が、業務改善のワークショップなどが開催され、前回の図6のイメージで業務改善案が出した場合でしょう。ワークショップ開催数カ月後に確認すると、往々にして何も進んでいないことがありますが、これは図1に当たる見える化が行われておらず、改善に対して工数や経費を投入するようマネジメントされていないためです。