本連載の第5回から第8回では上流工程やスタッフに関するテーマを中心に取り上げ、しばらく開発設計現場から離れていました。そこで今回と次回は、より現場に近い話題を取り上げたいと思います。

◆失敗事例研究:
立派な業務フローを完成したが改善効果は小さかった
[部品メーカーA社]

 A社は売上高数千億円規模の部品メーカーです。A社の工場では、生産性向上の取り組みが進められていました。この取り組みでは、動作レベルまで「見える化」が行われました。以下にその例を挙げます。

[1]右手でボルトを取り左手に渡す
[2]左手はボルトを持ったまま右手でワッシャーを取りボルトに組み立てる
[3]右手でナットを取りボルトに組み立て、5回ねじ込む
[4]左手で組み立てたものを完成品置き場に置く

 この水準で見える化した動作に対して、以下のような改善を施しました。

・動作の数を減らす
・同時に行える作業を統合する
・移動を低減する
・動作を楽にする

 このような改善をIE(Industrial Engineering)の理解と並行しながら地道に継続したところ、満足できる改善効果が獲得できたため、他部門でも同様の改善を行うべきとの声があがりました。