GoogleやAmazon.comがスマートフォンやタブレットといったハードウエアを販売し、AppleがiTunesを通じて楽曲などのコンテンツを販売する。これらの企業は差異化のために、データセンタのインフラの設計から、CPUの設計、人工知能による音声や画像の認識まで幅広い技術を開発する。以前は別の業界であったハード・ソフト・サービスが融合しつつあることは明らかです。

 技術に国境はありません。日本の企業や大学も生き残るためには変わらなければならない。ただ、1つの企業や組織ではハードからサービスまで広い分野を手掛けることは難しいでしょう。それならば、異業種と連携することが必要になるのですが、残念ながら良く聞かれるのが、

「それはわが社の仕事ではありません」

 自分の業種はこれだから他は関係ありません、という感覚がまだまだ根強い。縦割りの中に留まりがちなのは、企業だけでなく大学などの研究機関でも同じです。

 ハード・ソフト・サービスが融合する時代では、競争する土俵も事業領域も変わってしまうのです。GoogleやAmazon.com、Appleのように潤沢な資金、人材がないのであれば、せめて異業種を利用する、他人の褌で相撲を取るような積極的な考え方が必要ではないでしょうか。

 異分野が融合している典型的な例がロボットです。4月に米オバマ大統領が来日し、日本未来館を見学しました。その際、オバマ大統領はホンダの人型ロボット アシモとともに、東大発のロボット・ベンチャー、シャフトの創業者たちと彼らが開発したロボットと会ったそうです。

 しかし、シャフトはGoogleに買収されてしまいました。ロボットと言えば、日本のお家芸。今でも産業用のロボットは日本企業がとても強い分野です。その一方、二足歩行のような人型ロボットはおもちゃとしては面白いですし、将来的には介護や建築などの作業用に有望かもしれませんが、まだ機能も限定できていないですし高価です。誰でも気軽に使えるようになり、産業として大きな市場に成長するにはまだ時間がかかりそうです。

 人型ロボットは市場がすぐには広がらないために、シャフトも日本では資金調達に苦労し、結局はGoogleに買収された(してもらった)と伝えられています。投資対象としてロボットを評価する時に、おそらく日本のメーカーは、ハードウエアとしてのロボット単体の商売や市場を考え、市場が小さいのだから投資には時期尚早と考えたのでしょう。