太陽光パネルの製造、道路の洗浄、そして低カロリーマヨネーズの開発――。何の共通点もなさそうに思えるが、実はいずれも「微細気泡」(ファインバブル)の活用が進んでいる分野だ。今、この微細気泡を産業として育てようという機運が高まっている。

 微細気泡とは、液体や固体の内部に存在するμmオーダーやnmオーダーの気泡を指す。近年、この微細気泡はさまざまな効能を秘めていることが分かってきた。微細気泡の用途は、先に挙げた他にも、積層された半導体ウエハーの分離、排水処理、水耕栽培における農作物の成長促進などさまざまだ。

業界団体が誕生

 これらの効能に着目した企業や研究開発機関、大学が集まり、2012年7月に業界団体「ファインバブル産業会」(FBIA)を設立した。会員には、IDEC、資生堂、島津製作所、シャープ、三菱重工業、西日本高速道路(NEXCO西日本)、パナソニック、堀場製作所、ヤマト科学、キユーピー、キリン、メニコン、産業技術総合研究所、慶応義塾大学など多彩な顔触れがそろう。

 設立当初の名称は「微細気泡産業会」だったが、2014年2月に改称した。

 FBIAでは、異業種交流によって微細気泡の研究や関連技術の開発を促進し、微細気泡の産業化を加速させる方針だ。従来は、各社が独自に研究・開発を進めていた。だが、それでは効能や活用方法などの実態が表に出てこないため、用途がなかなか広がらず、産業としての発展性に乏しかった。

 ただし、産業化に向けては、より大きな課題が立ちふさがっている。「信頼」の構築だ。

 現時点では、微細気泡の厳密な定義はない。従って、市場で流通している商品の中には、効能が疑わしいものも存在している。FBIA副会長の藤田俊弘氏(IDEC常務執行役員)によれば、「ナノバブル入り」と銘打たれた飲料水を調べてみたところ、それらしき微細気泡が全く確認できなかったこともあったという。いわば、玉石混交の状態なのである。