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今あえて言おう、「IDMが再び重要な役割を演じる」と

今あえて言おう、「IDMが再び重要な役割を演じる」と

ファウンドリー主導で決まる半導体業界の未来【和田木 哲哉氏】

2014/06/06 00:00
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 半導体の技術と業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」。今回のテーマは「ファウンドリー主導で決まる半導体業界の未来」である。

 半導体業界では、米Intel社によるファウンドリー事業への注力、韓国Samsung Electronics社と米GLOBALFOUNDRIES社のプロセス統合など、ファウンドリー事業への新規参入、体制強化に関わる話題が増えてきた。ファウンドリー世界最大手の台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.,Ltd.)の半導体業界での影響力も大きくなる一方だ。ファウンドリーの勢力図やここでの技術開発のトレンドは、ファブレス半導体メーカーや日本の半導体メーカーなど利用するユーザー側と、製造装置や材料を供給するサプライヤー側の両方の関心事となっている。

 設備投資のリスクを軽減する上で、また既に実施してしまった設備投資の回収を確実にする上で、ファウンドリー事業の扱いは、あらゆる半導体メーカーにとっての戦略性の高い判断項目になっているように見える。ファウンドリー事業の重要性は、微細化や大口径化による設備投資の高騰や技術難易度の増大にともなって、ますます高まっていくことだろう。

 今回のSCR大喜利では、さまざまな半導体メーカーが外部ファウンドリーの利用やファウンドリーサービスの提供を始め、そしてファウンドリー専業企業の存在感が大きくなっていく先に、どのような半導体産業の姿があるのか、見通すことを目的としている。客観的な立場から半導体業界の動向をウォッチしている方を中心とする6人に三つの質問を投げかけた。今回の回答者は、SCR大喜利では、毎回歯切れのよい回答を寄せて頂いている野村證券の和田木哲哉氏である。

和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや) 1991年東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2010年にInstitutional Investor誌 アナリストランキング1位、2011年 日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)など

【質問1】将来、事業形態としてのIDMは消滅し、半導体産業はファウンドリーとファブレスに完全分業する方向に向かうのでしょうか?
【回答】 結末は不透明だが、少なくとも向かう方向は逆

【質問2】微細化や大口径化を進めていく上で、各ファウンドリーのプロセスは、独自性を保つべきでしょうか、それとも共通化を目指すべきでしょうか?
【回答】 立場によって異なるが、大多数の企業にとっては共通化が望ましい

【質問3】半導体業界のプロセスが一本化し、世界標準プロセスが生まれる可能性があると思われますか?
【回答】 可能性は低いが、ある

【質問1の回答】結末は不透明だが、少なくとも向かう方向は逆

 2000年代前半のIDMへの揺り戻しの時期を除けば、1990年代後半からここまでは、IDMが衰退し、ファウンドリーとファブレスはますます隆盛している。特に、ロジックにおいて、IDMという形態は消滅しかかっている。だが、あえて言う。これから、揺り戻しが起きる。

 産業史も歴史であり、人口動態、技術進化、地域の生産性などを背景にした大きなトレンドに、浮動的攪(かく)乱が織り交ざって、時代と言うものがつむがれていく。ファウンドリーがここまで巨大になったのにはいろいろな理由がある。話を単純にするために集約すると、(1)台湾における半導体産業振興策、(2)米国における半導体設備投資リスク回避の流れ、(3)微細化メリットの低下と技術難度の上昇というマクロ要因に、(4)TSMCという偉大な企業の存在という浮動的因子が重なった結果だといえる。

 しかも(1)~(3)は互いに相互作用を及ぼしていた。米国ハイテク産業が半導体の製造に魅力を感じなくなってきた理由は、微細化の難度上昇と投資の増大によって、コストメリットが大きく低下したことがある。台湾の半導体産業振興策は、米国ハイテク産業の意図的な製造離れという要因がなければ、早晩、不公正な産業育成策として米国に攻撃され(実際に、そういう動きも起きかけた)、修正せざるを得なかっただろう。台湾は米国経済界に自己を巻き込むことで、米国の庇(ひ)護の下に入るという、イスラエル型国家安全保障モデルを取っている。米国ハイテク業界には、究極的に喧嘩は売れない。しかし、ファウンドリー業界も死屍累々であり、業界がここまで大きくなるには、偉大なリーダーTSMCの存在が不可欠だった。

 さて、今、ハイテク業界が向かっている方向は、水平分業とは真逆である。米Apple社、米Google社、米Amazon.com社などの各陣営はデバイス、ハード、コンテンツ、サーバー、流通に至るまでの垂直統合を志向して、大胆に動いている。マクロでは、欧米で、産業空洞化への深い反省から、ものづくりの見直しと復権という動きが出てきた。

 加えて、半導体業界、特にファウンドリー業界への声として出てくるのは、最大手のプロセスに無理やり整合しないといけないことと、最低注文ロット数が多いことへの不満、工場を身近な北米に作って欲しいという要望、時に生起する歩留り問題による供給不安である。つまり、業界には明確な、脱ファウンドリー、脱1社依存へと向かうベクトルが働いている。

 しかし、先行きは、回答で書いた通り「不透明」である。ベクトルが向いても、バリアを乗り越える力がなければ、変化は不発に終わるからだ。バリアは、半導体製造への参入リスクである。技術的難度、必要投資資金に加え、トップメーカーのTSMCが強大であることから、内製メリットとリスクを秤にかけた時に、ファウンドリー依存の継続という判断が、引き続き下される可能性がある。この変化のベクトルを引き下げる技術変化か、バリアを乗り越えるだけの経済的モチベーションが創出されるかを見守る必要がある。

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