テレビの料理番組、雑誌や新聞、料理教室などでは、多くの「料理研究家」が活躍し、料理の美味しさと楽しさを伝えている。一方、最近の「STAP細胞」の騒動は、「科学研究者」に対する世間の関心を高め、科学研究者がどのような活動をしているのかをこれまでなかったぐらい世に広める機会となった。「研究家」と「研究者」は、字面を見る限りはたった1文字の違いだが、その意味合いは実はかなり違う。今回は、その違いについて考察してみる。ちなみに、今回のテーマは、小保方晴子さんが着ていた「割烹着」がヒントとなったことを付け加えておく。

「研究家」と「研究者」の違いとは

 筆者は、日本に来たばかりのとき、なぜ、日本にはこれほどまでに政治家が多いのかと素直に疑問を持った。中国では、政治家とは、素晴らしい功績を持ち、多くの人々から尊敬され、国家や政党においてトップレベルの地位にあるほんの一握りのリーダーのことを指す。しかし、日本では、政治を職業とすれば、誰でも「政治家」と言えるようだ。

 そして、日本での生活が長くなってくると、そうした“誰でも言える”みたいなところが、「政治家」だけではなく、「研究家」にもあることに気づかされた。ひとえに研究家といっても、料理研究家、働き方研究家、鉄道研究家など実にさまざまで、その数は非常に多い。

 そこで、湧き上がってきたのが、「研究家」と「研究者」には一体どんな違いがあるのかという疑問だ。筆者が調べた限りでは、それらに公式な定義や区別は無さそうだが、「Yahoo知恵袋」というサイトのベスト回答は次のようになっていた。

研究家:趣味。それが講じて職業にできることはあるが、所詮は趣味。例:料理研究家

研究者:職業で、これで生計を立てている。教育と訓練を受け第三者も研究者と認めている。例:栄養学研究者、生命科学研究者

 つまり、日本語の「~家」「~者」という接尾語は、「そのことを業としている人」や「そのことをよくする人」を表す。一般に、自らの意思に基づき独立して研究活動を行っている自営業者は研究家、研究機関などの組織の中で職業として研究に従事している人は研究者と呼ばれると筆者は理解した。料理研究家は、ほとんどが独立し、個人的な意思に基づいて料理を研究している。そのため、研究者ではなく研究家となっているのではないだろうか。それと比べて、同じ食業界の大手食品メーカーで基礎研究に従事している人は、企業や組織の方針に基づいて研究活動を行っており、そのため料理研究者または料理研究員と呼ばれるのだろう。

 一方、中国語の「~家」は、日本語と違って、その領域の最高レベルに達している人だけを指す。例えば、エキスパートの意味である「専家」、科学技術のエリアで超一流の研究成果を上げた「科学研究者」の意味である「科学家」などだ。同じ「科学家」でも、日本語と中国語では意味合いに雲泥の差がある。