『日経Automotive Technology』の最新号で、各社の自動ブレーキシステムを実験しました。本誌として初めての試みで、四苦八苦。例えば実験を始めた当初に戸惑ったことの一つが、多くのメーカーでエンジン始動後に自動ブレーキが3回動作すると、システムが停止する仕様としていることでした。

 実験は同じことの繰り返し。3回の制約はあっという間に超えます。大半のシステムでは、エンジン停止後に再び始動することで停止機能を解除できます。ただ一部のメーカーのシステムでは、販売店に行かないと解除できないとされるものも。当初はそのことを知らず、実験を繰り返すたびにエラーのアイコンが車載モニターなどに表示されるのであわてていました。もちろん、取扱説明書を読むと書いてあるのですが・・・。

 この仕様を織り込むメーカーの考えは、二つありそうです。一つが、一度の運転中に3回も自動ブレーキシステムが動作するのは、システムなどに“異常”がある可能性が高いと判断すること。もう一つは、運転者が自動ブレーキに頼って運転しているとみなし、そうした運転を防ぎたいということでしょうか。実験していて、「仏(自動ブレーキ)の顔も三度まで」とのことわざが頭を過ぎりました。

 「三度まで」の仕様のために実験当初は一苦労。車内に置く計測器の電源を車両からとっていたからです。エンジンを停止するたびに計測器が停まるので、設定は一からやり直し。最終的に電池を車内に持ち込み、電池から計測器に電力供給することでことなきを得たのですが・・・。

 もう一つ、私の勘違いのせいで驚いたのが作動車速範囲です。例えば作動車速範囲が30km/hまでのあるシステムの場合、私は当初、30km/h以下で衝突を回避し、30km/h以上で衝突の被害を軽減するように自動ブレーキが動作すると思っていました。ところが、30km/hをわずかに超えるとブレーキがかかりません。仕様通りなのですが、約20km/hのときには自動ブレーキが動作するので、突然故障したのかとあわててしまいました。もちろん、このケースでも取扱説明書を読めば分かることなのですが・・・。

 そしてなにより困ったのが、システムごとにこうした制約条件が異なること。実験を通じて、自動ブレーキ技術が発展途上のものであることを実感しました。技術者が試行錯誤しながら開発しており、そのことが仕様に大きな違いを生む背景にあります。実際に技術者と話してみると、特に誤作動をどう防ぐのかに腐心していました。誤作動の確率をどこまで許容するのかによって、仕様の違いの多くが生じているのです。

 ただ、すべての技術者に共通することもあります。それが交通事故を少しでも減らしたいという志。本誌は今回の企画が、志の実現を後押しするものになればと思っています。