太陽光の余剰電力を解決へ

 日本では、太陽光発電などの大量導入に伴い、春や秋の休日などの需要が低くなる時期に大量の余剰電力が系統網に流れ込む問題が深刻化している。この課題の解決のために、水素インフラの活用が検討され始めた。

 「北九州スマートコミュニティ創造事業」では、岩谷産業が東田地区の高齢者介護施設である「愛香苑」に、毎時2Nm3(ノルマルリューベ:標準状態での気体の体積)の水素を発生できる水電解装置、水素貯蔵タンク、定格出力4kWの燃料電池を設置し、2013年度から実証実験をスタートさせた。

 CEMS(地域エネルギー管理システム)との連携・制御によって、地域の電力が余った際には水素に変換して貯蔵し、需要が増えた際には燃料電池を稼働させて電力を供給することによって、地域の需給調整への貢献を目指す。

料金テーブル変更に即応

 北九州のこのプロジェクトでは、地域の需給状況に合わせて電力価格を変える「ダイナミックプライシング」が実施されている。2013年秋の休日には、需要が急減する日に価格を下げて需要を喚起する「CBP(クリティカル・ボトム・プライシング)」が発動された。

 同社は急変した価格に対応して自動で運転を切り替えられる制御ソフトを開発。CBPが発動されて価格が下がるので、燃料電池の運転から水電解装置の運転に即座に切り替えて水素を発生して貯める。

 こうした手法は、系統安定の効果だけでなく、消費者にとっても安価な電力を有効活用することによりコストメリットを提示できる可能性もある。岩谷産業は今後、コストメリットをさらに追及するとともに、消費者にとってメリットのある使い方を検討していきたいという。