日本や欧米諸国で、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が活発化している。天候に左右されるこうした電力を系統網に流す際に、系統網を不安定にさせる問題が顕在化してきた。この解決のために、蓄電池やスマートグリッドなどさまざまな手法が検討されているが、水素インフラもその有力な手段として検討が始まっている。

 フランスのコルシカ島では2012年より、太陽光発電と水素貯蔵技術を組み合わせて太陽光発電の変動する電力を平準化してスムーズに電力系統に連系するプロジェクト「MYRTE(Mission hYdrogene Renouvelable pour l’inTegration au reseau Electrique:電力網に統合するための再生可能水素ミッション)」をスタートしている。

 主体はコルシカ大学であり、プロジェトリーダーの同大学教授のPhilippe Poggi氏は、「再生可能エネルギー由来の不安定な電力を系統網に30%以上流すことを目標にしている」と言う。同プロジェクトにはフランスArevaが技術・資金面で協力している。

 560kWの太陽光発電パネルが設置されており、その余剰電力を使って50kWの電気分解装置で水を酸素と水素に分解し、各々をタンクに貯めておく(図1、図2)。1万5000Vの電力系統網と連系しており、電力が必要な場合は100kWのPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell:高分子固体電解質型)システムに水素と酸素を提供して発電する。電気分解と燃料電池による発電時の排熱は、温水として回収し、温水タンクに貯める。

図1 出力560kWの太陽光パネル
写真:日経BPクリーンテック研究所、以下同
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図2 水素タンクと酸素タンク
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 太陽光発電の変動電力を平準化するプロセスはこうだ。前日に、コルシカ島に電力を供給しているEDF(Electricite de France:フランス電力会社)に対して太陽光発電および系統網への電力供給の予測データを提供する。その際、天気予報や過去の実績などから太陽光発電の出力を予測するとともに、水電解装置と燃料電池を使って平準化した供給電力の出力予測データをEDFに提供する。