2014年5月14日にソニーが発表した2013年度の連結決算(米国会計基準)は、最終損益が1284億円の赤字となった。前期は415億円の黒字であり、当初は500億円の黒字を見込んでいたが、3回に及ぶ業績下方修正の末、今回の大幅赤字転落となった。しかも、2014年度の最終損益も500億円の赤字を見込んでおり、2期連続の赤字となる見通しである。
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業績悪化の元凶は改革の遅れ
同業のパナソニックやシャープが業績を回復しつつある中、ソニーの決算は対照的な内容となった。2012年度と比較すると、売上高は6兆7955億円から7兆7673億円へ14.3%増加したものの、営業利益は2265億円から265億円へと88.3%も減少している。このことから、本業の儲けである営業利益が大幅に減少したことが大きかった、という見方がされているようだ。
ただし、これを額面通りに受け取るのは少々注意が必要である。
米国基準を採用するソニーでは、VAIOで知られたパソコン事業からの撤退や事業構造改革に伴う費用を、売上原価や販管費に計上している。それが、2012年度は931億円、2013年度は1774億円あり、2014年度も1350億円を見込んでいる。
これら構造改革費用等の内訳は、早期退職費用や固定資産の減損損失などだ。このような経常性の低い費用を、売上原価や販管費に計上して営業利益に反映するというのは、普通はあまりやらないことだ。実際、パナソニックも米国基準を採用しているが、同社は早期退職費用や減損損失は営業利益に含めていない。それを考慮して修正すると、ソニーの営業利益は表1のようになる。
  | 2012年度 | 2013年度 | |
---|---|---|---|
ソニー | 売上高 | 67,955 | 77,673 |
営業利益 | 2,265 | 265 | |
営業利益 (修正後) | 3,196 | 2,039 | |
4.70% | 2.60% | ||
当期純利益 | 415 | △1,284 | |
0.60% | △1.7% | ||
パナソニック | 売上高 | 73,030 | 77,365 |
営業利益 | 1,609 | 3,051 | |
2.20% | 3.30% | ||
当期純利益 | △7,542 | 1,204 | |
△10.3% | 1.60% |
営業利益や当期純利益の%は、売上高に対する比率である。これを見ると、「本業の儲け」という本来の意味での営業利益は、ソニーとパナソニックで大差はない。ということは、ソニーの決算を苦しめているのは、他社より1~2年遅れて計上されている構造改革費用等ということになる。要するに、改革のスピードが遅いということだ。そのことは、決算発表の場で最高財務責任者(CFO)の吉田憲一郎氏も認めている。
構造改革費用の類は過去の膿(うみ)であり、それが計上されること自体は必ずしも悪いことではない。いわゆるV字回復を遂げた企業の多くは、その前の数年間、同種の費用を計上している。重要なことは、極めて短期間に膿を出し切るスピード感だ。大企業であるソニーに、そのスピード感があるかどうかが一番気になるところだ。