会計視点で見る話題の業界動向
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東芝原子力事業「のれん」減損の珍しいパターン
東芝の発表によれば、同社の2016年3月期の連結決算(米国会計基準)は4600億円の最終赤字になるという。その中で大きな額を占めているのは、米ウェスチングハウスの買収に伴う「のれん」の減損損失だ。その額は2400億円弱に上る。こののれん減損は、金額の大きさもさることながら、その理由が少々珍しい。
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三菱商事の4300億円減損で分かったIFRSのメリット
三菱商事と三井物産が2016年3月期決算で、創業以来初の連結最終赤字に転落する見通しとなった。いずれも資源安に伴う保有権益に多額の減損損失が発生し、減損損失は三菱商事が4300億円、三井物産が2600億円に上るという。資源安の影響はすべての商社に及んでおり、大手5社の減損額は合計1兆円近くに達する見…
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味の素の所定労働時間短縮に感じた違和感
いくつかのメディアの報道によると、味の素が今春の労使交渉の結果、従業員の基本給は据え置いたまま、所定労働時間を短縮することで合意するそうだ。実施は2017年4月からのようである。具体的には、1日7時間35分の所定労働時間を7時間15分にする。1日20分の短縮により、年間では労働時間は80時間の削減と…
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原価割れより深刻なマクドナルドの「客離れ」問題
日本マクドナルドの2015年12月期の直営店舗売上高は1425億円なのに、売上原価はそれを上回る1431億円になっている。売上高に対する売上原価の比率である原価率は100.4%であり、記事が指摘するように売上高が売上原価を下回っている。いわゆる原価割れの状態だ。日本マクドナルドは製造業としての性格も…
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俊敏性と全体最適の両立に挑むトヨタの社内カンパニー制
トヨタ自動車が2016年4月から社内カンパニー制を導入するという。自動車事業を車のタイプに基づいた社内カンパニーに分け、各カンパニーに製品企画から生産までの権限を委ねる方針だ。同社は2013年に、対象地域を意識する形で「レクサス」「先進国」「新興国」「ユニット(部品)」の4つのビジネスユニットを設け…
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杭打ちデータ改ざんを常態化させた工期優先の“採点基準”
横浜市の大型マンションが傾いたことに端を発する杭打ち工事のデータ改ざん事件。今や横浜市のマンションだけにとどまらない深刻な事態となっている。今回は、次から次へと発覚する類似の杭打ちデータ偽装から見て取れる問題点を考えてみる。
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東芝の役員責任調査に見えたサラリーマン社会の縮図
東芝は2015年11月9日、「不適切会計」に関する役員責任調査委員会の調査報告書を公表した。本報告書は、東芝における新旧役員の法的責任の有無とそれに伴う損害賠償請求の可能性について、弁護士を中心に構成された役員責任調査委員会による調査結果の報告である。
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VWと旭化成建材で分かった「非正直者」がバカを見る時代
東芝の「不適切会計問題」のほとぼりがさめ切らぬ間に、他の企業でも様々な不正が相次いで発覚している。独フォルクスワーゲン(VW)は、ディーゼル車の排ガス基準をクリアするために、検査中だけ排ガスを低減する不正ソフトを搭載していた。そうかと思えば、旭化成建材は横浜市の大型マンションの杭打ち工事において、地…
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東芝の不正会計は内部統制の強化では防げない
東芝の会計不正は、結局はガバナンスの問題によるところが大きい。問題発覚後初めての記者会見において、当時の社長だった田中久雄氏(2015年7月21日に辞任)は「内部統制が必ずしも機能しなかった」と述べている。第三者委員会の報告書においても同様の指摘がなされている。巷(ちまた)でも、今後の再発防止策とし…
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東芝の会計問題は不適切か粉飾か、専門家の視点で整理する
東芝の会計問題が報道される際には、「不適切会計」という表現が使われることが多い。当事者である東芝自身も、2015年7月29日に発表した「第三者委員会の報告報告の結果を受けた当社の対応策等について」というリリースで「不適切会計問題」と記述している。だが、「不正」と表現するメディアもあるし、少数ではある…
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最終報告書で明らかになった東芝PC事業の露骨な利益操作
東芝の不適切会計問題は、2015年7月21日に第三者委員会から最終報告書が公表されたことで、全貌がかなり明らかになってきた。その内容を踏まえて、今回はパソコン事業における部品の取引を取り上げたい。問題となったのは、部品の有償支給という取引だ。
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東芝不適切会計の発端となった、見積もり頼りの工事進行基準
東芝が不適切会計で揺れている。2015年3月に問題が発覚して、6月末現在、いまだにその全貌は見えてこない。全容解明は7月中旬以降になると見られている。そんな中、6月25日に開催した定時株主総会で、東芝は不適切会計の具体的な手法を初めて明らかにした。それによれば、不適切な会計処理は複数の事業分野に及び…
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シャープ大幅減資の隠された狙い、批判気にする余裕はないはず
前回は深刻な業績不振に陥ったシャープが債務超過を回避するために駆使する財務テクニック「DES」を取り上げた。だが、その後さらに新たな財務テクニックを使うことが明らかになった。それは減資だ。まず5月9日付の日本経済新聞朝刊などが、シャープは1200億円以上ある資本金を1億円に減資すると報道。その後、2…
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債務超過寸前のシャープが繰り出す急場しのぎの財務テクニック
シャープの業績不振が止まらない。2015年4月17日付の日本経済新聞によれば、同社の2015年3月期の連結当期純利益は2000億円超の赤字となる模様だ。同社は去る2月3日に、2015年3月期の連結当期純利益の予想を300億円からマイナス300億円へ、マイナス600億円もの下方修正をしたばかりだ。今回…
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第11回 分社化進めるソニーを待ち受ける3つのシナリオ
ソニーは、2015年2月18日の中期経営方針説明会において、すべての事業を分社化する方針を明らかにした。まず、10月を目処にウォークマン等を主力製品とするオーディオ・ビデオ事業を分社化し、残る事業も順次分社化していくという。今回は、ソニーのこの分社化について、最近議論が活発化しているコーポレートガバ…
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第10回 シャープに2度目の業績下方修正をもたらした単純かつ深刻な原因
2015年1月19日付の日本経済新聞朝刊に、シャープが2015年3月期に再び連結最終赤字に転落する見通しだという記事が掲載された。シャープはこの報道について、当初言明を避けていたが、それから約2週間後の2月3日、第3四半期の決算発表の場で正式に業績予想の下方修正を発表した。そこで発表された内容は、連…
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第9回 グローバルで資金の早期回収に取り組む東芝
東芝がグローバルで資金の効率化に取り組んでいる。日本経済新聞(2014年12月18日付朝刊)によれば、米州や中国など世界4カ所の地域総括会社にそれぞれCFOを置き、地域ごとに資金の流れを管理するという。地域総括会社は半期に1度、地域の事業会社と会議を開き、資金回収に関する課題の把握と改善を進める。地…
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第8回 カシオ計算機やアマダの積極的な株主還元から適正な富の分配を考える
株主への利益還元を積極化する動きが目立っている。前回取り上げた富士フイルムホールディングス以外にも、カシオ計算機は増額した配当と自社株買いで、合わせて約200億円を株主に還元する。これは当期純利益の9割に迫る額だ。金属加工機械のアマダは今期と来期の2年間、当期純利益の全額を配当と自社株買いに充てる。…
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第7回 成長と株主還元の両面作戦でROEの向上目指す富士フイルム
富士フイルムホールディングスは2014年11月11日、2017年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を発表した。同社はその中で、M&Aに5000億円を振り向けるのと同時に、自己株式取得と配当によって2000億円強を株主還元に充てるという方針を打ち出した。それによって、2014年3月期に4.2%…
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第6回 トヨタの「意志を持った踊り場」から考える企業の成長
企業は常に成長を求められる。「現状維持は衰退と同じ」とも言われる。各種メディアも「増収増益」や「減収減益」という表現を使って、常に前期と比べた増減を問題にしている。売上高や利益がマイナス成長になったら、それだけで大騒ぎだ。しかしその一方で、売上高も利益もほぼ横ばいの業績予想を「意志を持った踊り場」と…