「技術で勝ってビジネスで負ける」とはある種の日本企業の形容詞である、といったら言いすぎでしょうか。日経テクノロジーオンライン(Tech-On!)のテーマサイト「設計・生産」で5月(7日~26日)に良く読まれた記事の上位には、ものづくり技術とビジネスの関係を考察する記事が並びました。
第1位は連載「R&Dマネジメント成功事例と失敗事例」の第6回。研究開発(R&D)によって得られる商品やサービスの事業性を大まかでもいいから評価し、開発作業の進展とともにブラッシュアップしていくことが大事と説いています。この回の「失敗事例」は、ある自動車部品メーカーが、自社の優れた技術を利用して産業機械向けの部品を開発したが、売り出してみてから市場が小さいことが分かった、というものでした。
第2位は、日経ものづくり池松記者の海外取材記。ベンチャー企業が集まるイベントで、日本の存在感が皆無であることに気づいた同記者が、会場で「なぜ日本ではないのか」と質問しました。その答えは「スピード」。アイデアを盛り込んだ製品をいち早く市場投入したい米国のベンチャー企業にとって「日本は品質が高すぎてスピードが遅い」という認識のようなのです。ここでも、技術で勝ってビジネスで負ける現象が起きています。
第4位は、中央大学教授の竹内健氏によるコラム「竹内健のエンジニアが知っておきたい技術経営MOT」の最新記事。さまざまな製品で付加価値を生んでいるのはハードよりむしろソフトであり、技術をどのようにマネタイズするかを考える上でハードとソフトをどう融合させるかが大事だと説明しています。
イノベーションとは必ずしも新技術の発明や発展ではなく、もともとは既存技術の新たな組み合わせのことを意味する、としばしば指摘されます。米国のベンチャーにとっては、新たな組み合わせというアイデアの実証に必要な“既存のもの”を、いかに素早く入手できるかが最大のポイントなのでしょう。世界のニーズと日本の技術のミスマッチをどう解消していくべきか、当分は悩みが続きそうです。
ただ、日本企業が自分のことをきちんとアピールできさえすれば、技術の修正やアレンジを含めて、意外と方法が見つかるような気もします。つまり、日本企業が知られていないだけなのかもしれません。