EAPについての話が一段落したところで、そもそも「Wi-Fiネットワークに接続する」という動作が具体的に何をやっているのかを説明したいと思います。

ビーコンとスキャン

 Wi-Fi ネットワークに接続したいステーション(STA)は、まず接続先のアクセスポイント(AP)を探すことから始めます。通常は SSID (Service Set ID) と呼ばれる文字列でネットワークを識別しますが、Wi-Fi の仕様上 APを識別するのはBSSID (Basic Service Set ID, 実質的には MAC アドレス)でSSIDはオプションであり、SSID を持たないAPを運用することも可能です。このモードを俗に「ステルス AP」と呼んだりしますが、「ステルス AP」という用語には幾つか異なる定義がありますので注1)必ずしも一般的に通用する用語ではないことに注意してください。

注1) 「ステルス AP」と呼ばれる形態には長さ0のSSIDを用いる場合と、文字コード0x00のみで構成されたSSIDを用いる場合の2種類があります。またかなり特殊な形態ですが、AP からビーコンを送信せず Probe request (後述) にのみ応答するものを「ステルス AP」と呼ぶ場合もあります。

 Wi-Fi のAPは通常、「ビーコン」と呼ばれるパケットを恒常的に(通常は100ms間隔=秒間約10回)その AP が動作しているチャネル上に送信しています。ビーコンには様々な情報が含まれますが、代表的なものを挙げると

・BSSID、SSID
・ビーコン送信間隔
・チャネル(周波数)情報
・サポートする転送速度の一覧
・セキュリティー情報

などが含まれます。