「スピードが重要なんだ」

 彼の答えは実に明快でした。

デモデーの会場の様子
デモデーの会場の様子
起業家たちが事業内容を発表した後は、用意された軽食やドリンクを楽しみながら参加者たちが懇親する。

 「深センなら大抵のプロトタイプが低価格で安く、しかもスピーディーに作れるからね。日本の技術も素晴らしいけど、僕たちは日本ほどの品質は求めていないんだ。品質を求めれば、時間がかかるのは当然のこと。僕たちにとって何より重要なのは、いかに速く市場に製品を投入できるか。だから、今のところ日本という選択肢はないね」。

 「なるほど。ただ、試作段階ではそうでも量産段階においては品質も大事なんじゃないんですか? プロトタイプは中国で作るとして、量産段階に入ったら日本で作るとか…」

 「それは製品によるね。僕らは中国のEMSをたくさん知っているから、彼らができることであれば彼らにやってもらうよ。お互い知った仲だから意思の疎通も図りやすいし」

 そこまで言われるとなんだか悔しくて、今度は視点を変えて、こう聞いてみました。

 「日本の工場を見たことがありますか?」

 「ほとんどない。でも、興味はあるよ。実はつい先日まで日本にいて、幾つかの工場を回ったんだ。僕は日本に住んでいたこともあるから、本当は日本でもっと仕事をしたいと思っている。でも…やっぱり今の僕たちには中国が合っていると思う。繰り返しになるけど、僕たちにとってスピードは何より重要なんだ」

 この後、別の米国人投資家にも話を聞きましたが、内容はほとんど同じものでした。日本不在のものづくり起業ブーム。この状況を打開するために、日本のメーカーはどう行動すればいいのでしょうか。宿泊先への道のりで、そのことばかり考えていました。

 皆さんはどうすればいいと思いますか? この後も取材を続け、私なりに見つけた答えを日経ものづくりの2014年7月号に掲載する予定です。興味のある方はお読みいただければと思います。