[1]E-BOMとM-BOMは分けた方が良いのでしょうか?

 近年、自動車業界を中心に、グローバル化に対応したBOM(Bill of Materials、部品表)再構築の依頼や相談を受けることが増えています。そこで、先日、筆者の所属企業が主催するものづくりプロセス改革に関するセミナーに、複数企業の技術情報管理者や生産管理担当者の方々をお招きし、BOMに関する討論の場を持ちました。このディスカッション形式のセッションで「BOMは1種類がいいのか?目的別に分けた方が良いのか?」という質問があり、これをきっかけに議論が白熱しました。しかし、そもそもE-BOM(Engineering BOM、設計部品表)というものの捉え方が企業によって異なっていたため、議論は空中戦めいたものになり、収束しませんでした。

 というのは、E-BOM、M-BOM(Manufacturing BOM、製造部品表)、BOMという言葉だけで議論しようとしても、その捉え方は三者三様で、そもそも議論のベース自体がそろっていなかったのです。むしろ時間を長く取って、「あなたの企業にとってのE-BOMとは何か?」というところから話を始めれば、結果はまた違ったかもしれません。しかし、この時は約1時間限定の討論会で、参加者も数多くおられたこともあって結論を導くまでには至りませんでした。

 この「BOMは1種類がいいのか? 目的別に分けた方が良いのか?」と聞いた質問者に詳しい背景を伺うと、「現在、BOMは1種類だけでERP(生産管理システム)で管理されており、開発、生産双方が1つのBOMをメンテナンスしている。今回このBOMを再構築することになり、E-BOMとM-BOMを分けるべきかどうかで悩んでいる。現在、E-BOMというものはないが、自社にとってE-BOMは本当に必要なのだろうか。ERPのBOMだけでもメンテナンスが大変なのに、E-BOMとM-BOMを分けて個々にメンテナンスするとなると負荷がもっと増えるのではないか…」と心配していました。

 筆者のコンサルティング活動を振り返ってみても、E-BOM、M-BOMに関するIT視点の管理方法や目的そのものも、BOMの運用における履歴管理やトレーサビリティーの考え方も、本当に企業によってさまざまだと感じます。それらは特に製品に依存しているというわけでもなく、企業文化そのものだと思うこともあるほどです。前記の質問の回答も1つに決まるものではないと思いますが、これを考えていく中で、企業ごとの方向性を決めるためのヒントを提示できれば、と考えています。