先日、欧州最大の戦略コンサルティング会社であるRoland Berger Strategy Consultants社の会長であるRoland Berger氏にインタビューしました。自動車産業の未来を聞くと、「将来は自動車メーカーの付加価値はサービスやソフトウエアにシフトするだろう」と述べました。一方、「ハードウエアの付加価値はティア1の部品メーカーに移っていく」とし、システムサプライヤーの競争が厳しくなるという見方をしています。

 自動運転やITを使った配車システムなどによって、クルマのサービス的な価値が増える一方、エンジンや変速機などハードウエアの部分では大きな差別化ができず、完成車メーカーが汎用的な部品を使う方向にあるという見通しを持っているのです。

 サービス化の流れは、シリコンバレーで顕著です。例えば、スマートフォンの地図でハイヤーの位置を確認して、オンデマンドで空車を予約できる米Uber社のサービスは日本にも上陸しました(関連記事)。これは自動車メーカーのサービスではありませんが、今後は所有しているクルマだけでなく、タクシーやハイヤー、カーシェアリングのクルマが通信機能によって、より便利に使えるようになることは間違いないでしょう。

 米国では、乗車定員に満たないクルマをスマホで探して、同乗させてもらうサービス「Lyft」や、自家用車をカーシェアリングに登録して、自分が使わない時間に第3者に貸す「GetAround」といったサービスが立ち上がっています。こうした機能がどんどん一般化すれば、自動車メーカーもそうしたサービスに乗り出すかもしれません。一度買ってもらったら、後は価値がどんどん減っていく自家用車を、カーシェアリングやレンタカーとして活用し、“稼ぐ”クルマに変えていくことで、新車販売を加速できる可能性もあるのです。

 クルマとITの融合は、こうした新ビジネスモデルの創出だけにとどまらず、自動運転や電動化、米Google社や米Apple社が入り込もうとしている車載情報システムにも影響しそうです。これまでのクルマは閉じた世界で、安全性や信頼性を追求してきました。しかし、ITでは外部のプレーヤーといかに役割を分担して、必要なサービスやソフトを作るかという視点が欠かせず、クルマの開発体制も大きく変えていく必要があるのです。

 日経Automotive Technologyでは、5月28日に先のUber社をはじめ、インテル、マツダなどが講演するセミナー「シリコンバレー発、つながるクルマの最前線」を開催します。ITと融合するクルマの将来を展望する上で、こちらもぜひ参考にしてください。