自動運転・運転支援
 

クルマの安全性を高める赤外線カメラ

中島 募=日経エレクトロニクス
2014/05/12 05:00
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 近年、事故を低減するための安全システムを備えるクルマが急増しています。エアバッグはもちろん、横滑り防止装置やトラクションコントロールなどの標準装備も珍しくなくなり、最近では衝突防止用の自動ブレーキも急速に普及しています。こうした安全システムの普及により、日本ではクルマの搭乗者が死亡した事故の件数が大幅に減ってきました。

 警察庁の調べによると、2003年に3000人を超えていた搭乗者の死亡数は、2013年には約1400人と半分以下になりました。こうした中、次の課題とされているのが歩行者が巻き込まれる死亡事故です。2003年に約2400人だった歩行者の死亡数は、2013年では約1600人。搭乗者の死亡数と比較して小さい減少幅です。搭乗者の安全を確保したクルマは増えているものの、歩行者の安全性に配慮したクルマはまだ少ないということだと思います。

 そこで自動車業界では、安全なクルマ社会を実現する“次の一手”として、歩行者など対人の安全性を高めるシステムを採用する機運が高まっています。その一つとして、多くの車両への搭載が見込まれるのが「ナイトビジョン」というシステムです。

 夜間にクルマを運転しているとき、路上にいる人が暗闇にまぎれていてひやりとした経験がある人は少なくないと思います。ナイトビジョンは、こうした暗闇にいる人を検出してディスプレーに表示したり、運転者に警告を出したりします。人の目では見ることができない赤外線を検知する赤外線カメラの一種です。

 ナイトビジョンの現在の価格は20万~25万円と高く、ドイツAudi社やBMW社、Mercedes-Benz社など高級車の上位車種にしか搭載されていません。ですが今後は、大衆車にも普及する見通しです。「Euro NCAP」という欧州の自動車安全試験において、歩行者検知の技術が2016年に評価対象の一つとして加わるからです。このうち夜間の検知技術として、ナイトビジョンが有力視されているわけです。

 Euro NCAPは第三者による安全試験ですが、自動車業界に対して絶大な影響力を持っています。欧州では、Euro NCAPの評価に応じて自動車保険を割り引く優遇措置制度が浸透しているからです。しかも、日本や米国などの安全試験がEuro NCAPの動きに追随してきた経緯もあります。日本では国土交通省の関係団体が実施する安全試験「JNCAP」において、2016年を目標に夜間歩行者検知を導入する計画です。

 こうした動向を見据え、赤外線カメラの業界ではナイトビジョンの低コスト化を目指す技術の開発が活発化しています。赤外線カメラの高コストの要因である光学レンズの材料レベルの見直しや、イメージセンサーのパッケージング技術などです。対車両向けの被害軽減ブレーキが10万円を切った時点で普及期を迎えたことから、ナイトビジョンも10万円以下が目標とされています。

 赤外線カメラをはじめとする赤外線のセンサーは、クルマ以外にも様々な用途があります。例えば、温度分布を可視化する「サーモグラフィー」という赤外線カメラは現在、道路や電気設備、プラント設備などの異常や故障の箇所を特定するツールとして利用されていますが、ナイトビジョンの普及による量産効果で光学レンズやイメージセンサーなどの低コスト化が進めば、家庭での美容や健康管理などにも気軽に使えるようになるかもしれません。既に高齢者などの見守りシステムや、照明・空調と連動する省エネ化システムといった活用方法も提案されています。

 日経エレクトロニクスの5月12日号特集「ヒトより見える眼、クルマから広がる」では、このように車載のナイトビジョンから再始動する赤外線センサーの技術革新や応用分野の広がりを取り上げました。ご興味のある方はぜひご一読いただければ幸いです。

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