2014年4月から大学でエンジニアリングデザインの講義を始めています。講義の準備を進めながら、なぜ、日本の半導体は世界で一人負けになったのか、考えています。半導体に限りませんが、デジタル化されたハードウエアの事業では、よほど飛び抜けた技術、コピーが難しい技術がない場合には差異化が難しくなりました。技術の電子化、デジタル化により、良いものを作っても、すぐにコピーされてしまうのです。

 よく言われるように、日本の製造業の多くはハード重視でやってきました。目に見えないソフトは軽視され続けてきた。ハード重視というのは、ハード製品を製造する工場長がやがては社長に昇進する出世コースであることからもわかります。ハード(半導体)設計が専門だった私が大学に移り、研究の重点をソフトに移したら、「ソフトなんてちゃらちゃらしたこと」と陰口を叩かれることもあります。

 ハード重視、ソフト軽視の理由は様々でしょうが、ハードの工場は人の雇用を生むので、ハード事業は社会貢献とみなされることも一つの理由でしょう。ソフトは製造コストや流通コストがハードと比べれば無視できるくらい小さいですから、事業だけ考えれば本来は素晴らしいはず。しかし、ソフトは人の雇用を生まないからダメという感覚の人や、目に見えないものは信じられないという人が今でも多いのです。

 ハードとソフトを組み合わせないと製品やサービスの競争力を出しにくくなっているのは、一見、典型的なハード技術に見えるSSDやストレージでも同じです。データを最適なメモリに配置するアルゴリズムや、メモリのエラーを訂正するソフト技術が、最終的なSSDやストレージの性能に大きな影響を与えるのです。