我が国の医療機器産業を加速させるにはどうしたらよいのか。業界人なら誰もが考えているだろうが、意外な落とし穴に気付いていない。前回のコラムで提示した米国企業との比較を引き合いに出しながら、この難題解決に一石を投じてみたい。

「研究課題解決」だけでは商売にならない

 市場調査から始まる産業戦略については、日夜、頭を巡らせている人たちも多い。その過程の中ではまりやすい「調査研究段階」での問題点について考えてみることにしよう。

 図1は、典型的な医療機器開発の一例で、ビジネスとしては成り立たない失敗のケースを示す。

図1 調査・研究段階に開発工数(赤線)を集中させすぎてしまうことで、結果として売上げ・利益(青線)の確保につながらないケースを示したグラフ。(著者が作成)
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 入念な市場調査をはじめとして、いざ取り掛かった基礎研究を続けながら、なかなか本論まで至らない例だ。本論とは、とりもなおさず商品化に向けた集中開発体制を意味している。オーソドックスな方法論でありながら、実は見かけ倒しでお勧めできない事例でもある。特に、真面目なエンジニアリング思考で、まともに入口から入ったまま立ち往生しているような感じだ。