製造業を取り巻く環境は、この数年で大きく変わり始めています。企業間の競争の舞台はドメスティックからグローバルへと大きく広がっています。グローバル展開を成功させるには、人づくりや技能伝承が欠かせません。技術開発面でも、MAKERSブームに乗って急速に市民権を得つつある3Dプリンターの製造業での活用が今後大きく進む方向が見えてきた他、新材料や加工、接合技術などのブレークスルーが続いています。

 それでは、日本の製造業は今後、何を強みにしていけばいいのでしょうか。我々が確信しているのが、工場の重要性が今後ますます強まっていくことです。日経ものづくりによる読者アンケートの結果を見ても、10年前に比べて、工場や生産現場が日本の強みとなると回答した読者が大幅に増えています。加えて、製造業のサービス化も今後は避けて通れないでしょう。顧客の問題解決に有効なサービスを提供する手段としてハードウエアを位置付ける動きは、ますます加速していく見込みです。

 日経ものづくりでは、2014年を創刊10周年記念イヤーと位置付け、誌面強化やイベント、記念シンポジウムなどを展開しております。誌面については、 事業環境の激変を受け、全コラムで「グローバル」という視点を強く意識します。海外での技術情報を強化するとともに、製造業に身を置く企業が世界での競争に勝つためにはどのような技術・戦略が求められるのか、 といった命題の答えを提供します。加えて、製造業にとって、事業の新たな出口である新分野や成長分野の情報も充実させます。日経ものづくりの根幹を成す技術情報については、設計・開発と生産の双方で技術革新を徹底的に追っていきます。

 こうした全体方針の下、今回お届けする2014年5月号では、創刊10周年記念特集・後編としまして、製造業に身を置く企業による「ものづくり戦略」に焦点を当てました。日本の製造業はこれまで「効率性の追求」に邁進してきましたが、これからの10年、より熾烈を極めるグローバル競争を勝ち抜くためには「革新性」の追求が不可欠になります。今回、ホンダやパナソニック、東レなど、革新的なものづくり手法の導入で先行する企業の具体例などとともにお届けします。

 特集2では、インターネットとビッグデータにより、その姿を大きく変えようとしている「工場」を取り上げました。ネットワークを介して工場の内外から収集した大量のデータを活用する、いわゆる「つながる工場」がいよいよ現実のものとなろうとしています。先進的な事例から工場の将来像を占います。

 最後にご紹介したいのが、特集3(羅針盤スペシャル)です。本誌は創刊以来、日本の製造業を支えるキーマンの生の声を巻頭で紹介してきました。独自の技術論から未来への提言までテーマは多彩ですが、共通するのはものづくりに対する熱い思いです。

 今回は、読者の方々が世界を舞台に活躍する上で重要な指針となり得る内容を至言集としてまとめました。その中に、きっと未来を引き寄せるヒントを見つけていただけるはずです。どうぞご期待ください。