日常生活で見慣れた電源コンセントの形状が大きく変わる可能性が出てきた。その中心になりそうなのが、デジタル機器のデータ通信インタフェースだ。USBやEthernetといったデータ通信インタフェースの接続口が、電源コンセントの役割を果たす。これらのインタフェースの接続口で、電力もデータもやり取りできる環境が整いつつある。(詳細は、日経エレクトロニクスの関連記事「すべてを飲み込むUSB、データに電源、4Kを一本で」)

電源コンセントの姿が変わる。写真は、Newer Technology社のUSBコンセント(日経エレクトロニクスの関連記事「すべてを飲み込むUSB、データに電源、4Kを一本で」から)

 100Wまでの電力供給に対応したUSBの技術仕様「USB Power Delivery Specification(USB PD)」に対応した製品が2014年中にも登場するとの見方が強まっている。これは電力の供給能力を現在の最大バスパワー4.5W(0.9A、5V)の20倍以上に高める仕様で、2012年7月に標準化団体が策定した。バスパワーは、データ通信をしながら供給できる電力を指している。

 100Wは、40型のディスプレーが動作する水準の電力だ。USB PDによって民生機器の大半を駆動できるようになる。USB PDに対応したモバイル端末向けの新しいコネクター仕様も姿を現した。2014年4月にUSBの標準化団体が中国で試作品を初めて公開した「Type-C」である。

 Type-Cコネクターは、開口部の大きさが従来のスマートフォンで採用している「Micro」仕様よりも小さい。最大データ伝送速度10Gビット/秒の「USB 3.1」に対応する。USB PDによる供給電力は、最大60Wになりそうだ。

データと電力の共通化で配線が簡素に

 既にUSBを電源ケーブルの代わりに用いる利用シーンは一般的になりつつある。ホテルや空港などの施設では、壁に設置したコンセントにUSB端子を追加するケースも出てきた。モバイル端末の充電用にテーブルにコンセントを設置するコーヒーショップなども街中で増えており、こうしたコンセントが次第にUSBに置き換えられていく可能性は高そうだ。

 電源コンセントと情報コンセントの共通化が進むインパクトは大きい。電力を供給しながら機器間ネットワークを構築する環境を整備しやすくなるからだ。

 例えば、ACアダプターで駆動する大型ディスプレーをハブにして、パソコンや外付けHDD、サブディスプレーなど複数の機器をUSBで接続する機器間ネットワークを実現できる。テレビや録画装置、ゲーム機などをUSBコンセントで動作させることも可能である。従来のように機器ごとに電力線とデータ線をそれぞれ用意する場合に比べて、ケーブル数が減り、配線が大幅に簡素になる。家庭内ネットワークに接続する機器が増え、たこ足配線で悩んでいるユーザーにとっては朗報だろう。

 このほか、USB PDには、モバイル機器のACアダプターを共通化できる利点もある。スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンを一つのACアダプターで駆動したり、充電したりできるようになる。持ち歩くモバイル端末が増える中で、電源アダプターの数が減ることへの期待は大きい。