インダストリー4.0は、ドイツ政府が2020年を目標に推進している技術戦略だ。そのコンセプトを一言で表すとすれば、「つながる工場」。工場を核にインターネットを通じてあらゆるモノやサービスが連携することで、新たな価値やビジネスモデルの創出を目指している。

 インダストリー4.0の名称には、人類史で第4次の産業革命という意味が込められている。第1次は18~19世紀の水力や蒸気機関による械化、第2次は19世紀後半の電力の活用、第3次は20世紀後半のコンピューター制御による自動化だ。いずれも産業そのものの在り方を大きく変えたが、インダストリー4.0はこれらに比肩する重要な取り組みと位置付けられている。

 その意気込みは、ドイツが設立したインダストリー4.0のプロジェクトに参加しているメンバーの顔触れからもうかがえる。各省庁はもちろん、ダイムラーやボッシュ、シーメンス、SAPなどのドイツを代表する企業、さらに主要な大学や研究機関も名を連ねる。IoT時代にこの分野で主導的な役割を担うべく、ドイツの産官学が一致団結しているのだ。

 工場のIoTともいうべきインダストリー4.0で、どのような価値が生まれるのか。例えば、飲料ボトルのカスタムサービスだ。飲料メーカーがウェブサイトで消費者の注文を受けて、誕生日パーティー用に顔写真入りのラベルを貼ったボトルを提供するサービスは既にある。ただし、飲料メーカーは受注してもすぐに対応できるわけではない。工場では、生産スケジュールや資材調達の調整が必要になる。つまり、現時点では消費者の注文を受けるウェブサイトとボトルを造っている生産ラインは、ネットワーク的に分断されている。

 インダストリー4.0で目指しているのは、この両者をシームレスにつなげることである。市場の要求に対応するために、市場と工場をネットワークで接続し、生産ラインが自律的に稼働する。その結果、品質やスピードなど多くの面で優れたサービスを提供できるようになる。

 従来、工場の中では主に自動化(FA)の観点からネットワーク化やITの活用が進んでいた。インダストリー4.0は、その対象を工場の外、すなわち自社のオフィスや市場にまで広げようとする取り組みともいえる。このように拡張した工場を「スマートファクトリー」と呼んでいる。

 そもそも、ITの活用による「スマート化」は、携帯電話機(スマートフォン)や計測器(スマートメーター)のようなモノから、都市(スマートシティー)や電力網(スマートグリッド)のようなサービスまで、あらゆる分野で見られる動きだ。工場をスマート化しようとするインダストリー4.0も、同様の動きの一つといえるだろう。

インダストリー4.0(Industry 4.0)とスマートファクトリーの概念(出典:インダストリー4.0ワーキンググループ)
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