2014年4月末、商船三井が戦後補償を巡る訴訟で中国の裁判所から貨物船を差し押さえられ、供託金として約40億円を支払ったことが明らかになった。尖閣諸島を巡る問題に端を発する反日が、中国でビジネスを展開する日系企業にとって近年、大きなリスクになっているが、商船三井の問題は、日系企業に改めてチャイナリスクの存在をまざまざと見せつける格好になった。

 中国で起きた日本絡みの騒動といえば、2014年3月、ニコンのカメラがやり玉に上げられたことを記憶している向きも多いのではないかと思う。同月15日、中国中央テレビ(CCTV)の番組が、ニコンのハイアマチュア向けデジタル一眼レフ(デジイチ)カメラ「D 600」に黒点が写り込むなどの欠陥があると紹介。中国におけるニコンのクレーム対応も極めて悪いと批判する番組を放映した。これを受け、上海当局が翌16日、D600の販売を差し止めるようニコンに通達。同社もこれを受け入れ、3月末には日本を含む世界でクリーニングや部品交換を実施しても問題が解消しない場合はD600か同等製品への交換を行う、と発表している。

 ニコンのD600は2012年の発売直後から黒点が写り込む症状が甚だしいとの指摘が中国に限らず、日本や欧米のユーザーからも寄せられていたという。したがって、「やり玉に上げられた」と書くのは適当ではないのではないかという指摘もあろう。ただ、D600の問題を取り上げたCCTVの特番は、3月15日の世界消費者権利デーに合わせて毎年、外資系企業を取り上げ批判することで有名。エレクトロニクス関連では2013年に米Apple社が中国市場における保証期間を巡る問題で、2010年には米Hewlett-Packard社がパソコンの品質問題で名指しで批判され対応に追われたという経緯がある。

表●デジタルカメラと交換レンズの世界出荷台数
単位は万台。
西暦デジタルカメラ交換レンズ
1999508.8595.4
20001034.2518.4
20011475.3568.5
20022455.1524.6
20034340.8473.9
20045976.6535.3
20056476.6706.3
20067998.1877.0
20071,0036.71251.4
20081,1975.71565.5
20091,0586.41609.5
20101,2146.32169.5
20111,1552.42601.5
20129813.93037.2
20136284.02668.8

 さて、デジタルカメラといえば、エレクトロニクス・家電業界で「日本最後の砦」と言われるほど日系メーカーが市場を独占している分野だが、スマートフォン(スマホ)台頭のあおりを受け、市場が縮小しているのは周知の通り。

 カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計によると、デジタルカメラの世界出荷台数は、統計が始まった1999年以降右肩上がりで成長を続け、2007年には1億台を突破した。ところが1億2000万台を記録した2010年をピークに成長が止まり、2012年には1億台を割り込み、翌2013年には6200万台余りとピーク時の半分程度にまで減少してしまった()。