半導体の技術と業界の今と未来を、様々な視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」。今回のテーマである「今、改めて問い直す450mmウエハーの存在意義」、第2回の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷 翔太氏である。以下のような、他の回答者と同じ3つの質問を投げかけた。

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー
三ツ谷翔太(みつや しょうた)
 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】現在の半導体業界の状況を鑑みて、450mmウエハー・ラインの開発を進める意義を感じますか?
【回答】 生産効率向上の延命に過ぎず、本質的意義は感じない

【質問2】450mmウエハー・ラインの開発を継続するための必要条件は何だと考えますか?
【回答】 需要側の成長加速と供給側の進化減速が必須

【質問3】困難な状況での開発の継続、または現時点での開発の中止、凍結で、製造装置メーカーには、どのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】 開発における不確実性のさらなる高まり

【質問1の回答】生産効率向上の延命に過ぎず、本質的意義は感じない

 450mmウエハー・ラインのそもそもの開発理由は、「高機能化に伴うチップ面積の拡大と微細化の限界に伴う、ウエハー1枚あたりの取り数拡大」、要は生産効率の延命にあった。しかしながら、今後の半導体市場は成長こそするものの、その成長は鈍化傾向にあり、生産性向上に関するニーズの強さや持続性には疑問符が付く。

 また、ライン導入に巨額投資が必要であることの裏返しとして、半導体メーカー(およびファブ)にとっては、他社に先駆けてのライン導入による競合他社の突き離しも期待し得る。しかし、そもそも寡占化・集約化が相当に進んでいる半導体業界(およびファウンドリー)において、その効果の大きさは不透明である。

 生産効率向上の延命は確かに分かりやすい命題であり、全否定するものではない。だが、半導体メーカーにはそれよりもむしろ、成熟しつつある半導体市場の中で新需要を掘り起こすような、新しい価値創出を目指した開発を期待したい。