EUV露光とは、波長が13.5nmの極端紫外線(extreme ultraviolet)を用いた半導体露光技術のこと。半導体を極限まで微細化する技術として、長年期待を集めてきた。ところがEUV露光装置の開発は大幅に遅れており、最近では実用化が危ぶまれる状況となっている。露光は、半導体の微細化を根本から支える技術。それだけに、EUV露光の成否は半導体の将来を大きく左右することになる。

光源の出力が足りない

 EUV露光装置の開発が遅れている最大の要因は、露光のスループットを決める光源の出力アップが遅々として進んでいないことである。2014年2月に開催された露光技術に関する国際会議「SPIE Advanced Lithography」。この場で半導体露光装置最大手のオランダASML社が発表したEUV光源の出力は70Wにとどまり、発光の持続時間もわずか6分間である。対して、露光装置ユーザーである半導体メーカーが求める光源出力は「少なくとも450~500W」(ファウンドリー大手の米GLOBALFOUNDRIES社)(図1関連記事1)。しかもこの出力を長時間維持する必要がある。現在の実力と目標の開きはこれほど大きい。

 EUV露光装置の開発には莫大なリソースが必要なため、開発を進めている企業はASML社のみ。半導体露光装置で業界2位のニコンはEUV露光装置の開発を事実上、凍結している。つまり、EUV露光の成否はASML一社に委ねられた形となっている。

 ASML社はEUV露光装置の開発を加速しようと、露光装置光源の最大手メーカーだった米Cymer社を2012年に買収した(関連記事2)。同じ年には、EUV露光装置のポテンシャルユーザーである米Intel社と台湾TSMC、韓国Samsung Electronics社の3社による資本参加も受け入れた。これらの成果が、現時点では表れていないというのが実情である。

図1●GLOBALFOUNDRIES社によるEUV露光のコスト試算(同社の資料)
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