これまで別々に市場拡大を続けてきたデジタル機器とモバイル機器は、技術進歩によりスマートフォンを中心とした集約化の流れが加速している。スマートフォンがデジタル・カメラやゲーム機器の機能を取り込み、タブレットPCがノートPCを取り込み、スマートフォンとタブレットPCの両者はテレビの機能まで取り込みつつある。

 よく議論になるのが、「タブレットPCとノートPCの競争はどちらが勝つのか? タブレットPCとして取り外し可能のノートPCなど中間製品が頭角を現すのか」というテーマである。筆者はノートPCを置き換えられる機能を備えたタブレットPCが出現するとみているが、それは必ずしもノートPCがなくなることを意味するわけではない、と考えている。

 ノートPC市場については、現在の1.6億台から1億~1.2億台に向け緩やかな市場縮小が続くとみているものの、これはタブレットPCによる置き換えの影響だけではなく、ノートPCそのものの買い替えサイクルが長期化していることが大きく影響しているとみている。筆者の基本的考えは、向こう3年以内にノートPCとタブレットPCの境界線はかなり曖昧になり、一つのカテゴリに収斂するというものである。そして、現在の主要PCブランド(HP社、Lenovo社、Dell社、Acer社、ASUSTeK社、東芝など)と主要タブレットPCブランド(Apple社、Samsung社、Google社、Amazon.com社など)との競争を占う際に、タブレットPCブランドの方が足元の収益力、キャッシュフローや財務体力で勝り、ブランド認知度も高く、Android搭載製品が多いことからOSコストも安い、といったことを念頭に置かねばならない。

 タブレットPCブランドではApple社のようにノートPCを手掛ける企業もあるが、プレゼンスは大きくなく、タブレットPC市場で高いプレゼンスを獲得できればノートPC市場で失うものは少ないため、思い切った戦略が採れる。しかし、一旦タブレット市場で一定の地位を獲得し、ノートPCブランドが撤退に追い込まれた場合、タブレットPCブランドが、新たにキーボード付きの典型的なノートPCを投入することも、あり得なくはない。つまり、最も重要なのは、どのブランドが勝ち組として残るか、という点であり、どの製品が市場に残るかの予想は消費者視点で別途考えるべき、ということである。