政府は2014年1月に召集された第186回通常国会で、電力小売りの全面自由化を盛り込んだ電気事業法改正の成立を目指している。2013年11月の法改正で決まった広域運営推進機関の設置に続く、電力システム改革の第2弾になる。2015年は発送電分離を実現する法改正を実現し、電力自由化を支える体制を固める。

 小売りの全面自由化の実施は2016年からだが、自由化をにらんだ企業の動きはすでに加速している。全面自由化で膨らむ小売市場を狙って新電力(特定規模電気事業者、PPS)に登録する企業は急増しており、4月1日現在で192社と、1年で2倍以上に増えた。

 新電力は契約電力50kW未満の小規模事業所や一般家庭までを含む全需要家への販売が可能になる。だが、実際に新電力の販売量がどこまで伸び、新サービスがどう増えていくのかを見通すのは難しい。

 2000kW以上で受電する大需要家を対象に、小売りの自由化が始まったのは2000年。2005年に対象が50kW以上にまで広がって今日に至っているが、新電力のシェアはごく限られる。

 東日本大震災以降、電力会社の料金が上昇する中で新電力への切り替えが進んだといわれるが、自由化部門で新電力が占める割合は発電量ベースで4.5%にとどまる(2013年度上期)。電力会社が自社のエリアを越えて電力を販売した例も、九州電力が広島(中国電力管内)にあるスーパーに供給している1件があるだけだ。部分自由化後も、実態として電力会社による地域独占がほぼ維持されてきた。

写真1 新電力への参入が相次いでいる
写真は、大口向け電力小売りに参入する日本製紙の発電所(静岡県富士市)