東京メイカーでは、例えばiPhoneなどの「東京ちぇんけーす」シリーズやランプシェードなど、見る人が見れば「どうやって作ったの?」と不思議になるようなさまざまな作品を発表してきました。作る時のこだわりは、3Dプリンターでなくてはできないモノ、今までは業務用3Dプリンターでなくてはできなかったモノ、逆にパーソナル向け3Dプリンターでしかできないモノ、です。

図4 背面がチェーンで構成されているiPhone向けの「東京ちぇんけーす」。個々のチェーンは分離しているが、サポートなしで一体造形する。
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図5 ランプシェード。こちらも一体モノで、電球を出し入れする開口部はない。電球を組み込んだ状態で造形した。
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 このような活動を続けていた2013年8月末頃、あるメンバーが「サブカルチャーの聖地『中野ブロードウェイ』にアンテナショップを出そう」と提案しました。その理由は、「自分たちだけで、次々に新しいアイデアを形にするのは限界がある。一般の人たちに3Dプリンターが普及するには、もう少し時間とキラーコンテンツになる何かが必要だ。一般の人たちがどんなものづくりをしたいと思っているかを聞く必要がある」というものです。

 確かに、パーソナル向け3Dプリンター関係のお店は東京・秋葉原には既にいくつかあるし、渋谷は家賃が高く、客層もちょっと敷居が高い感じがします。その点、中野は庶民的でライバルとなる既存店はほとんどいません。しかし私は、「中野ブロードウェイは、マニアといっても自分でモノを作ることに興味がある人たちが集まってくる場所ではなく、中野でしか手に入らない超激レアなコレクションアイテムを売り買いしにくる場所」という認識でした。ですので3Dプリンターのお店を出してもお客さんは来ないと思いましたし、何より(私の自宅がある)横浜から通うには遠すぎるので反対でした。