クルマは今や「走るビッグデータ生成装置」。リアルタイムで精度の高い位置データを収集できる。渋滞の緩和や事故の防止、災害時のライフラインの確保など、様々な目的での活用が見込まれている。

 多くの企業がこの情報に群がり始めているなか、いち早く成果を上げているのが埼玉県だ。2007年以降、ホンダが提供するカーナビデータを使って、急ブレーキが頻繁に発生している危険箇所を把握。重点的に標識の設置などを進めてきた。これにより、危険箇所での1カ月当たりの急ブレーキ発生は7割減。2011年までに危険箇所での人身事故の発生を2割減らす成果を上げ、データ分析の対象業務を広げている。

 このプロジェクトに取り組んだのが県土整備部道路政策課。「道路交通センサス」の作成を担当するなど、道路交通に関する多くのデータを扱ってきたが、リアルタイムの自動車走行データを活用するのは初めてだった。

時刻と位置の“羅列”に悩む

 最初の1年間はモデル地区を設定し、カーナビデータを使って危険箇所の特定を試みた。ホンダ車が搭載するカーナビシステム「インターナビ」が、数秒ごとに取得する位置情報のデータを分析して、完成したのが急ブレーキマップ(図1)。減速度の大きさに応じて、赤・青・緑に色分けした矢印を地図上に表示する。矢印の混み具合で一目で危険箇所が分かる。この最終形に至るまでにはプロジェクトチームの並々ならぬ苦労があった。

図1●カーナビデータから算出した急ブレーキの発生箇所を地図上にプロット
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