半導体業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「ADASでパソコンの「Wintel」のような業界標準は生まれるか」である。今、注目の車載システム、先進運転支援システム(ADAS)に向けた半導体市場の行方を探る。

 このテーマ最終回の今回は、中立な立場から車載向け半導体市場を見ている、IHSグローバル 日本オフィス代表の南川明氏に聞いた。

南川 明(みなみかわ あきら)
IHSグローバル Technology 日本オフィス代表 主席アナリスト
南川 明(みなみかわ あきら)

 1982年からモトローラ/HongKong Motorola Marketing specialistに勤務後、1990年ガートナー ジャパン データクエストに移籍、半導体産業分析部のシニアアナリストとして活躍。その後、IDC Japan、WestLB証券会社、クレディーリヨネ証券会社にて、一貫して半導体産業や電子産業の分析に従事してきた。2004年には独立調査会社のデータガレージを設立、2006年に米iSuppli社と合併、2010年のIHSグローバル社との合併に伴って現職。JEITAでは10年以上に渡り,世界の電子機器と半導体中長期展望委員会の中心アナリストとして従事する。定期的に台湾主催の半導体シンポジウムで講演を行うなど、アジアでの調査・コンサルティングを強化してきた。

【質問1】ADASの開発・生産において、特定仕様の半導体デバイス、ソフトウエアをベースにした開発プラットフォームは必要でしょうか?
【回答】 必要である

【質問2】ADASにおいて、パソコンにおけるWintelのような開発プラットフォームの業界標準が生まれる可能性はあると思われますか?
【回答】 可能性は低い

【質問3】自動運転やバッテリー制御など、制御色の強い車載電子システムでは、開発プラットフォームの標準化の考え方にADASと違いはありますか?
【回答】 バッテリー制御は標準化ではなく寡占化が起こる

【質問1の回答】必要である

 車載ソフトウエアの肥大化・高度化に伴い、そのベースを共通基盤化して開発期間の短縮やコスト削減を図る必要に迫られている。具体的には、マイコンや車載LAN、OS、通信ソフトウエアの共通化が検討されている。同様に、開発プラットフォームの共通化も有効である。具体的には、制御モデル記述、検証などの手法やツールの共通化である。

 車の電子化が進むにつれて、ECU搭載数の増加やソフトウエアの増大、制御の複雑化と信頼性維持の難しさが増している。最近のリコールの多発はこれが原因と言われており、早急な対応が求められている。

 業界標準化活動は既にAUTOSARやJasParで行われている。ADAS分野の国際規格は2011年にISO26262として発効されており、製品安全規格に関しては定まっている。ただしこれは製品の安全を保証するための規格であり、共通化とは直接関係ない。だが、この規格をクリアするためには膨大な作業が発生しコストアップにつながるため、共通化が必要になっている。