政府は女性が活躍しやすい社会の構築を目指している。配偶者控除の廃止など制度改革が検討されているが、制度だけでなく会社の勤務形態の多様化、とりわけ在宅勤務の拡大が女性の就労には大きな意味を持つ。

 実は情報通信技術の発達で在宅勤務を支える環境は劇的に改善している。今後5年間の消費トレンドを予測したレポート『消費トレンド 2014-2018』(日経BP社)の著者で、消費者動向に詳しいキリン食生活文化研究所 所長の太田恵理子氏は、在宅勤務は女性のみならず、日本全体の生産性を上げる未来の雇用の武器になる可能性を秘めているとみる。(日経BP未来研究所

女性の就労を巡る動き

 安倍首相は3月19日に開催された政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で、配偶者特別控除の縮小・廃止を検討するよう指示した。人口減少に向かう日本が労働力を確保するためには女性の就労が欠かせず、また現状の税・社会保障制度が女性の就労拡大を抑制しているという考え方が背景にある。

 日本の未来を考えるとき女性は極めて重要な戦力になる。2月10日に労働政策研究・研修機構から公表された「平成25年度 労働力需給の推計」によると、2012年に2654万人であった女性就業者数は、ゼロ成長・労働参加現状シナリオでは2030年に2313万人へと341万人減少するが、経済再生・労働参加進展シナリオでは2697万人と43万人増加すると見込んでいる。経済再生のシナリオ下でも男性の就業者数は3616万人から3405万人へと211万人減少する。

 問題は女性にどう働いてもらうかだ。就業者増加に大きく関わるのは、育児と就業の両立環境整備を背景とした、女性のM字カーブの解消である。M字カーブは、女性の就業率を年齢階級別にプロットすると、子育て期に低下するためグラフがM字を描くことを指す。育児休業制度の拡充や待機児童の解消のほか、女性の継続就労を促進する要因として、労働時間の短縮や男性の家事分担が進むことが想定されている。

 就業を継続しても子供が小さいうちは長時間労働を行うことは難しい。運良く保育園に入れたとしても、子供が病気になった時は預かってもらえないなど、突発的に仕事を休まざるを得ないことも発生する。

 こうした状況のままでは、女性が子育てを重視して仕事を辞めたり、仕事のために子供を産まない選択をする例が増え結果的に少子化に歯止めがかからなかったりするのではないだろうか。やや古いデータだが、国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、2005年~2009年に第1子を出産した人の44%が出産を機に退職している。育児休業取得の有無にかかわらず就業を継続したのは27%で、20年前と比べても3ポイント弱増加しただけなのだ。

結婚/出産した年別に見た女性の就業状況。図は、『消費トレンド 2014-2018』(日経BP社)から抜粋
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 状況改善のための手法として注目されているのが在宅勤務だ。2月10日、私は在宅勤務を推進する田澤由利氏の出版記念パーティーに出席していた。『在宅勤務が会社を救う』(東洋経済新報社)と題された書籍は、その場で自民党の高市早苗政調会長にも手渡された。