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人材育成とコミュニケーションの役割

吉田 勝=日経ものづくり
2014/04/10 09:00
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 「知識や技術を身に付ける時間と機会が減っている」---。2014年4月号の特集「人材力 再強化」の取材先の方は、皆さん異口同音にこう述べていました。かつての製品開発や製造の現場には、技術者・技能者が時間をかけてさまざまな経験を積み、自ら考えることで、幅広い知識とノウハウを蓄積していく余裕がありました。しかし、短い開発・製造期間で低コストなものづくりを追究する中、ITツールによる利便性や効率化による生産性の向上と引き替えに学習機会が減り、それが人材力の低下をもたらしているというのです。

 それ故に、どの取材先でもかつてとは違うやり方で技術者・技能者をスキルアップしていかなければならないとの危機感が感じられました。例えば、富士ゼロックスモノづくり技術開発部機能部材開発部では、技術者のさらなるレベルアップを図るため、ベテランの知識を若手に伝えるために品質機能展開(QFD)の手法を応用した独自のツールを開発しています。同部は、複写機の主要機能を担う重要な部材を開発する部門。そのため、技術者は複写機の根幹に関わる部材の機能とそのメカニズムをしっかりと理解する必要があります。特許などの関係で詳細は明らかしていただけませんでしたが、そのツールを使うことでベテランが持つ経験や暗黙知を、若手が理解できるように形式化するのだということでした。「取り扱っている現象が、どういうメカニズムで起こっているのかを理解できる」(同部部長の杉崎裕氏)。原理・原則ともいうべきメカニズムを理解することで、課題やトラブルに対して対症療法ではなく根本から考えて対応できるといいます。

共通の言葉で理解が深まる

 実は、そうしたツールを使うことには、もう1つの効果もあります。それは、ベテラン技術者と若手技術者のコミュニケーションが円滑になることです。ベテラン技術者の知識が伝わりメカニズムをきちんと理解することによって、「共通の言葉で会話できるようになる」(杉崎氏)というのです。

 実は、このコミュニケーションが人材育成の1つのキーワードではないではないかと思っています。特集の取材でも、技術者同士のコミュニケーションが減っていること、人材育成の取り組みはすなわちコミュニケーションを深めるための取り組みでもあることを、多くの方が指摘されていました。例えば、特集記事でご紹介したミネベアの特機事業部における加工作業の電子マニュアル「WJ個別手順書」も、同手順書を活用するシーンではもちろんのこと、それを作成する過程でベテランと若手の技能者のコミュニケーションが深まり、技能伝承が進んだといいます。ドキュメントなどの形式知として表現するだけでは、知識やスキルはなかなか伝わりません。伝える側と伝えられる側とのコミュニケーションの中で実践してこそ、形式化された知識やスキルへの理解が深まり、それが身になっていくのだと感じました。

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