よく言えば新鮮、ですが取材の際には何度も「すいません、よく分からないんですが…」と聞き直してしまいました。男女の価値観の違いを埋めるのはなかなかに難しい。一つの策は、女性に任せること。

 例えばフリューではプリントシール機の商品企画部門には女性しかいません。企画を固めた上で、男性が大半を占める技術部門に話を持っていきます。「当初は、技術者から『新規性のある技術を一つも載せないのか!』と条件反射のように反論されることも多々ありました。ですが、“女の子が何を求めているのか”がもっと大事なのです。チーム全体で、価値観を共有する議論を丁寧に行う」とフリューの担当者は教えてくれました。

努力したい願望

 目からウロコの話は他にもいくつもあったのですが、ここではもう一つだけ。美しくなりたい女性の願いを叶える技術を「シンデレラ・テクノロジー」と呼んで研究している久保友香氏(東京大学大学院 情報理工学研究科 客員研究員)の言葉がとても印象的でした。曰く、「女の子は努力したいんです」――。

 一瞬、耳を疑いました。より簡単な操作で短時間、誰が使ってもきれいに仕上がる製品やサービスの開発を多くの企業が目指していると思います。ですが、一部の女性はそこを求めていないというのです。久保氏によれば「ちょっと扱うのは難しいけど、自分だけの使いこなしができて、他の人よりちょっとだけきれいになれるモノが女の子は欲しいんです」とのこと。例えばプリントシールにしても、自分がきれいに写る設定や角度、機種にこだわっている女子中高生が実は多くいるそうです。

 ただ、この気持ちは男性にも理解できるのではないでしょうか。例えば久保氏は「スポーツカーのカスタマイズが大好きな人とは、この努力したい/努力を誉められたい願望で意気投合したことがある」と言います。あえて“隙”を用意してあげる工夫が、ユーザーの心をつかむわけです。女心や男女の価値観の違いを理解する方法は他にもあるはずです。そのためにはもっと女性に話を聞かなくては。もちろん仕事としてです、はい。