これからの日本の製造業を支える輸出産業として注目されるのが社会のインフラストラクチャーである。その中でも鉄道インフラは、車両から土木、建築、運行管理システムに至るまで総合的なシステム構築能力が必要とされる。新興国では鉄道運営の経験がないため、そのノウハウが大きなビジネスの種となるのだ。地球環境にかける負荷の小さい、輸送効率の高い手段として鉄道輸送が期待を集めているという側面もある。経済産業省の資料によれば、世界の鉄道市場の市場規模は2020年には22兆円に達するという。

 この鉄道インフラにおいて、最も重要なものの1つが鉄道車両であろう。日本の製造業は、その国民性に合致した「擦り合わせ型」に特化した方が競争力を発揮しやすいと、本連載でもこれまで繰り返し述べてきた。最近の車両は、高効率かつ省電力を求められる中で、輸出先各国において鉄道会社や車体メーカーの求めるさまざまな規格に対応させなければならない。しかも、何といっても車両の安全性は人命に直結する。まさに自動車と同様に擦り合わせ型の製品であるといえよう。

 今回は、三菱電機の交通事業の中核を担う伊丹製作所(兵庫県尼崎市)における、鉄道車両の安全性を確保するためのITの利用手法を紹介する。