我々無線屋は「デシベル(dB)」という単位を多用します。「RSSI -60dB」だとか「最大出力14dB」「スプリアスマ-ジン5dB」「アンテナ利得3dB」などと言ったりします。しかしデシベルっていったい何なんでしょうか。今回は対数とデシベルの話について、少し数学遊びを交えながら紹介します。

デシベルと対数

 Wikipediaでデシベルの定義を引くと「ある物理量を基準となる量との比を常用対数によって表したもの」と出てきます。つまり dB という値は「比率」すなわち相対値を示したもので、絶対値ではないということが分かります。

 対数というのは乗数の逆です。10の3乗(103)は1000ですが、1000を常用対数で表わすと log10 1000=3になります。すなわち L=logN(X)に対して NL=Xが成り立ち、Nのことを「底」と呼んでいます。「常用対数」とは10を底にとする対数で、分かりやすくいえば「ゼロが何個付くか」を示しています。Log10 1000=3 というのはゼロが3つ付いていることですね。マイナスの値だとこれが小数点になり、例えばlog10 0.001=-3 です。対数は整数になるとは限らず、例えば log10 20は1.30103...という実数になります。

注1)工学屋は10を底とする常用対数を使いますが、数学屋さんが使うのはe=2.71828..を底とする「自然対数」です。log() という表記で常用対数、ln()という表記で自然対数を使い分けることもあります。

 10を底とする常用対数比は「ベル(B)」という単位で呼ばれますが、ベルという単位では滅多に使われません。技術屋が多用するデシベル(dB)はベルの 1/10、つまり 10dB=1B になります。理屈でいえばミリベル(mB)とかキロベル(kB)という単位だってあり得ますが、デシベル以外の対数表現はほぼ使われません。0dB は 100=1倍、1dB は 100.1≒1.259 倍、3dB は100.3≒1.995 倍、10dB は 101=10倍という具合になります。

 対数の良いところは、非常に大きな範囲の値を小さな数値で表現できることです。100万倍はlog10 100万=6B=60dB (すなわち10の6乗)ですし、100兆倍は log10 100兆=14B=140dB (10の14乗)です。ドラゴンボールの戦闘力やキン肉マンの友情パワーもdBで表現すれば、あんなに沢山のゼロを振り回す必要は無いんですね。

 もう一つの良いところは掛け算・割り算を足し算・引き算で置き換えられることです。例えば 100万×100兆は log10(100 万×100兆)= log10 100万+log10 100兆なので 200dB(10の20乗)という値がすぐ出てきます。伝送系における利得や損失は足し引きではなく掛け算なので、dBで表現すると計算が楽になるのです。