自動車向けの暗号開発に取り組むのが情報通信研究機構(NICT)セキュリティ基盤研究室である。

 3回連載の最終回は、同研究室室長で自動車の情報セキュリティーシンポジウム「escar Asia」のプログラム委員も務める盛合志帆氏と主任研究員の野島良氏に、自動車の情報セキュリティーを高めるのに向きそうな新しい取り組みなどについて聞いた。(聞き手は清水直茂=日経Automotive Technology)

複数の人で暗号情報をシェア

盛合 自動車のセキュリティーという観点におけるNICTの主務としては、ネットワーク上に流通するデータのセキュリティーやプライバシーを守ることだと考えています。今後車両の情報をサーバーにアップロードする機能はどんどん広がるでしょう。そうした時代では位置情報を含んだプライバシーの情報をいかに守るかが肝心になります。同一人物の同一のIDのクルマをずっと追跡されて、この人はこういう経路で移動しているということが分からないようにしなければなりません。

 車載センサーのデータ通信を保護するのが第1の課題です。例えばタイヤの空気圧センサー(TPMS)のデータを改ざんされると困ることがありますよね。パンクしたという偽の情報を表示されてしまうと大きな問題になります。とはいえ空気圧センサーのリソースは限られているので、現状の暗号を使うのはなんだか大げさ。まず私たちが提案したいのは、リソースの限られたセンサーにも搭載できる軽量暗号を使うことです。

左が主任研究員の野島氏、右が室長の盛合氏
左が主任研究員の野島氏、右が室長の盛合氏
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