お薬手帳を電子化し調剤情報を活用

 医師が処方した薬の名称や量、服用回数、飲み方などの調剤情報を使う方法もある。例えばライフログとして「お薬手帳」の情報を使う。実際、その仕組みは実用化されつつある。

 川崎市は、ソニーと組んでお薬手帳を電子化。2013年秋に試験サービスを始めた。非接触ICカード「FeliCa(フェリカ)」を搭載したカード(以下、FeliCaカード)を利用する。利用者は、病院で発行された処方箋を持って薬局に行き、薬局で専用端末(カードリーダー)に電子お薬手帳をかざす。これで、処方された薬の情報を電子お薬手帳に記録できる。

 電子お薬手帳に記録された調剤情報は、ソニーのクラウドに保管される。このデータから統計を取ることで、どの地域でどのような病気が広まっているかが分かる。例えば抗インフルエンザ薬がどれだけ処方されたかを調べれば、近隣でのインフルエンザ感染者の推移をつかめる(図3)。ソニーはこれらの統計データを自治体に提供する考えだ。

図3 ソニーと川崎市が進める「お薬手帳」の電子化では、匿名化された情報を分析することで、疾患の流行情報などを把握できる
(図:ソニーのニュースリリースより引用)
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 なお、クラウドに登録する情報には、氏名や生年月日といった個人情報は含まれない。電子お薬手帳の中でデータを分け、調剤情報だけをクラウドに送るようになっている。FeliCaカードごとのIDを使って個人と調剤情報をひも付けるため、仮にクラウド上のデータに不正にアクセスされても、個人情報が漏れる心配はないという。

この記事は日本経済新聞電子版のテクノロジー分野のコラム「Tech Frontline」から転載したものです。