調査会社テクノ・システム・リサーチ(TSR)の複数のアナリストに、スマートフォンやセンサ、カメラなどの技術/市場動向を寄稿してもらう連載。今回は、大きな成長が見込まれる監視カメラ市場について、同社 アナリストの吉田和美氏が分析する。(日経BP半導体リサーチ)

 TSRでは、監視カメラ市場についての市場調査を行っている。2013年の市場規模は、4800万台、2014年には5700万台へと拡大すると予測している。監視カメラの市場規模に関しては、デバイスベンダーの認識では2013年時点で1億台を超えている。対してカメラセットベンダーの認識では、上記の4800万台となっている。この差分は中国のシンセンに拠点を置く膨大な数のカメラベンダーによるものである。以下では、カメラセットの視点から監視カメラ市場を分析する。

監視カメラ市場の動向

 2013年に4800万台だった監視カメラ市場は、2017年には7400万台へ拡大すると予測されている。監視カメラには、アナログ出力のアナログカメラ市場とデジタル出力のネットワークカメラ市場が存在しているが、市場の中心はアナログカメラ市場である。2013年時点において、アナログカメラ市場が4000万台、ネットワークカメラ市場が800万台となっている(図1)。

図1●監視カメラの市場トレンド
[画像のクリックで拡大表示]

 2014年以降、監視カメラはネットワークカメラへとシフトしていく。一方、アナログカメラ市場も拡大を続けることが予想される。これまでHD画質の出力が難しかったアナログカメラは、ネットワークカメラによる急速な置き換えが進むと予測されていた。しかし、CCDセンサーからCMOSセンサーへの置き換えによってアナログカメラでHD画質の提供が可能になったこともあり、アナログカメラ市場は当面の間市場の大半を占めることとなるだろう。このカメラは、HD-SDI規格を搭載したHD-CCTVと呼ばれており、特にアジアを中心に拡大している(本稿とレポート内では、アナログカメラに分類される)。このHD-CCTVは、アナログカメラのインフラを活用しているために導入コストを削減できるメリットがある。ただし、データ転送距離に制限があることやデータ容量が大きいことなどから、ネットワークカメラの代替とはなりえない(表1)。

表1●監視カメラの分類
[画像のクリックで拡大表示]

 従って、2017年に向けて監視カメラ市場は、ネットワークカメラの拡大に加え、アナログカメラがHD-CCTVに切り替わり、さらにアナログカメラのハイエンドがネットワークカメラへとシフトしていく。そのため、2017年における監視カメラ市場は、アナログカメラが5500万台、ネットワークカメラが1900万台の市場になると予測される。金額ベースでは、付加価値の高いネットワークカメラ市場が2016年にアナログカメラ市場を上回る見込みだ。

ネットワークカメラ市場の動向

 監視カメラで今後の成長が期待されるネットワークカメラ市場では、2013年に800万台(25億米ドル)だった市場が、2017年には1900万台(51億米ドル)に拡大する見通しである。ネットワークカメラを導入する目的は、高画素化や遠隔監視、さらには将来的に画像解析による付加価値が期待されている。ところが従来は、デジタル化やシステム構築のノウハウの点から欧米市場が中心だった。しかし、中国政府が2010年ごろからネットワークカメラを導入し始めたことから、急速に市場が拡大しており、中国が米国に次いで大きな市場となっている(図2)。

図2●2013年のネットワークカメラ市場の地域別比率
[画像のクリックで拡大表示]

 中国市場の主要なカメラはアナログカメラだが、近年は政府系案件以外の金融機関や文教施設などでも積極的に導入されている。従って、中国市場は2014年以降もエンドユーザーのすそ野を拡大しながら拡大をしていき、アメリカ市場に追いつくと予測される。また、ネットワークカメラ市場は、オリンピックやワールドカップの開催によっても市場が拡大するため、2016年のブラジルオリンピックや2020年の東京オリンピックに向けても導入が進みそうだ。

 2013年以降、ネットワークカメラ市場は新規需要に加えて、アナログカメラの置き換えが必須となっている。監視カメラはビルや店舗、都市監視、金融機関、空港などに導入されているが、ネットワークカメラの需要はビルや大型店舗、政府系案件などが中心だった。そのため、金融機関や空港、小型店舗などにネットワークカメラを導入することが求められている。こうした背景から、メーカー各社は、アナログカメラを置き換える大型システムや小規模に導入するためのパッケージの提供などを積極的に展開している。