「低燃費、低CO2を目指すべきことは明らかであり、その方向への啓蒙活動自体を否定するつもりはないが、エンジンも車両も何もかもダウンサイジング、パワー余裕もドライバビリティもケチってのエコカーばかりでは、クルマの未来が暗くなる」。Tech-On!(日経テクノロジーオンライン)のテーマサイト「クルマ」において、2014年3月7日~3月27日のアクセスランキングで1位に輝いた記事「クロスオーバーSUVとクルマの未来を考える」の一節だ。
エコカーへの流れを作った当事者ながら…
クルマを移動のための手段として捉える人にとっては、エコカーばかりでも構わない。しかし、クルマに乗って走ること自体に楽しみを感じている人にとっては、走る喜びを与えてくれるクルマが不可欠だ。エコは大切だが、そうした喜びを許してくれる余裕のある社会であってほしい。そんな筆者(八重樫武久氏)の声が聞こえてきそうな言葉だ。
八重樫氏は、トヨタ自動車で初代「プリウス」のハイブリッドシステム開発リーダーを務め、その後、2代目プリウスに搭載した「THSII」などハイブリッドシステム全般の開発を手がけた専門家だ。自らクロスオーバーSUV「ハリアー」に乗り、週末やバケーションには海や山へとアウトドア用品を積んで出かけていた人物である。そして、自らの経験を通して、クロスオーバーSUVにおける低燃費ハイブリッド車の必要性を痛感し、その実現に向けて力を注いだ人である。
まさしく、エコカーへの流れを作った当事者。しかし、同氏はそれを自認しながら、「エコ、エコのオンパレードの中で、ゆとりを感ずる個人の自由な移動手段の代表であるこうしたクロスオーバーSUVが衰退してゆくのを見るのは残念である」と前述の記事の中に綴っている。クルマ好きならではの葛藤があったのだろう。