これまであまり使われてこなかった分野に、有名な基本理論を導入するという点も、「コロンブスの卵」的なDyson流の技術開発に沿った発想法に見えます。

 国内の白物家電メーカーへの取材で聞こえてくるのは、「そんなにすごい技術ではないのに、アピールがうまいんだよね」というDyson社評。その発言の裏には「俺たちの方が技術的にはすごいのに、なぜ、あちらだけが注目を集めるのか…」という本音が隠れています。Dyson社の掃除機が市場にショックを与えてかなりの年月が経ち、同社が国内で一定の立ち位置を確立してもなお、この声が絶えないところをみると、技術者の美学としてはよほど腑に落ちないところがあるのでしょう。

 今回のランキングを見ると、熱くなるLED電球を液体シリコーンで液冷したり(第7位)、LEGOブロックを使って「ルービックキューブ」を3秒ほどで6面完成させたり(第10位)、発売から2年たってもデジタルカメラが売れ続けていたり(第8位)、米国のインターネット企業がハードウエア開発の中心にいたり(第13位第15位)と、10年前であれば、あまり常識的ではなかった内容が並んでいます。技術者として腑に落ちないこと。本当は、そこに新しいアイデアのタネが転がっているということなのかもしれません。