恥ずかしながら、「ヘルムホルツ空洞」という言葉を初めて知りました。日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「家電・PC」で、3月5~25日のアクセスランキング2位に入った英Dyson社の新型扇風機の記事です。
4年ほど前に登場して話題を呼んだファンのない扇風機の新機種。今回は、ヘルムホルツ空洞を利用して静音化を実現しています。 ただ、「ヘルムホルツ空洞って、何だ?」と思って、インターネットで調べてみても、なかなか要領を得ません。検索上位は、ほとんどDyson社の扇風機を紹介する記事だったからです。
しかし、救いの手は差し伸べられるもの。さすが、日経テクノロジーオンラインの読者のみなさん、さっそく記事にコメントが入りました。いわく、「音響の分野では『ヘルムホルツ空洞』ではなく、『ヘルムホルツ共鳴器』という用語を使うのが一般的です」(音響屋さん)。
Dyson流の微妙なさじ加減
なるほど。確かに「ヘルムホルツ共鳴器」で引くと、学術的な説明がたくさん出てきました。ヘルムホルツ共鳴器は…、ん? ヘルムホルツさんは、声道の形と共鳴音の関係を研究した人物…。学生時代の記憶がよみがえってきます。実は、音声の研究をしていました。どうやら、ヘルムホルツ共鳴器は、音響・音声の分野では基本理論のようです。
これ以上、深入りしてはいけません。馬脚をあらわし、サイトマスターとしての信用を失うことになりかねません。いずれにせよ、記事を執筆した『日経ものづくり』の高田デスクによれば、ヘルムホルツ空洞によって静音化された新型掃除機は、従来機種よりも大幅に動作音が小さかったそうです。従来機種は音が大きいという指摘が多かったようですから、空洞はそれを改善するためのアイデアだったということでしょう。
こうした技術キーワードをピンポイントで打ち出す味付けは、いかにもDyson流。やりすぎても一般消費者は離れていくでしょうし、全くなければ「すごさ」が伝わりません。微妙なさじ加減には匠の技が必要です。家電量販店の店頭で、お茶の間で、飲み会の席で、「ヘルムホルツ空洞だから静かなんだよね」と、わけ知り顔で熱く語る様子が目に浮かぶようではないですか。